本の紹介:ミュオグラフィ ― 2018/01/15 21:16

田中宏幸・大城道則,ミュオグラフィ ピラミッドの謎を解く21世紀の鍵.2017年9月,丸善出版.
ユニークで面白い本です.
高エネルギー地球物理学の田中氏と古代エジプト史の大城道則氏の共著です.
第1部ピラミッドは,大城氏が書いています.最近のピラミッドやミイラについての研究の成果が詳しく述べられています.写真や絵が載っているので理解しやすいです.
第2部ミュオグラフィでは,ミュオグラフィの原理・測定方法から最近の成果まで詳しく述べられています.
強く興味を引かれたのは,三浦半島,房総半島,伊豆半島で行った既存トンネルでのミュオグラフィの成果です.三浦半島中部ではミュオグラフィによって,広域的にトンネル上部の地盤の密度が得られていて地質分布とよい一致を示しています(Tanaka,H K.M.,2015 のFigure 10:この論文はウェブサイトからダウンロードできます).
ミュオグラフィは,様々な対象に適用されつつあります.この本に紹介されているのは次のような分野です.
火山;日本,イタリア
鉱床:カナダ
遺跡:ギザの三大ピラミッド,メキシコのテオティワカンのピラミッド群
地下空洞(鍾乳洞):ハンガリー
氷河の基盤岩:スイス・アイガー氷河
二酸化炭素地下貯留効果判定:イギリス,アメリカ
高炉内部観測:日本(旧新日鉄)
電気炉内部観測:日本(カーバイド合成炉)
原子炉:日本(福島第一原子力発電所 2号機,5号機)
放射性廃棄物サイロ:イギリス・イタリア
火星の洞窟観測:ローバーを洞窟近くの谷に降ろして観測する.
火星のビンゴ様地形・火星の火山の観測
火星の惑星フォボスの観測:フォボスの密度は異常に小さい.その秘密の解明.
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以下,感想です.
応用地質分野では,川崎地質(株)の鈴木敬一氏が「ミュー粒子による物理探査の可能性」(物理探査,2012,第65巻,第4号,251-259)で,ミュオグラフィの成果と今後の可能性を述べています.ミュオグラフィで三次元トモグラフィ解析を行った大谷石採石場跡地での例を紹介しています.
この本では,ボーリング孔内に挿入できる円筒形のミュオグラフィ観測装置が紹介されています.二酸化炭素回収貯留の観測用にイギリスやアメリカで開発されたものです.
大深度地下での観測により,その上部の地盤の密度の違いを検出できるというのは非常に魅力的な探査方法です.弾性波速度や比抵抗といった物理量とは違った活用の仕方ができると思います.土木地質分野での利用が進むことが期待されます.