本の紹介:自衛隊海外派遣 ― 2022/06/10 17:45

布施祐仁、自衛隊海外派遣 隠された「戦地」の現実。集英社新書、2022年4月。
2005年6月23日午前9時過ぎ、イラク南部サマーワの陸上自衛隊宿営地で「QRF集合! これは訓練ではない」という一斉放送が鳴り響きました。QRFというのは、Quick Reaction Forceの略称で「緊急対応部隊」のことです。これより先、道路の竣工式に参列する隊員達が宿営地を出ていました。この隊員達の車がサマーワ市街地近くで道路に仕掛けられた爆弾で攻撃を受けたのです。
この本は、こんな緊張感の漂う話から始まります。
情報公開請求によって自衛隊の海外派遣の実態を次々と明らかにしています。
2016年7月に南スーダンのジュバで「政府軍と元反政府軍との間で、散発的に発砲事案が生じているということです」と中谷元防衛大臣が発言しました。著者は、この発言に強烈な違和感を感じました。このジュバ・クライシスと呼ばれるようになる戦闘の実態を明らかにするために情報公開を請求しました。公開された日報からジュバ・クライシスの実態が明らかにされます。
そのほか、イラク派遣、カンボジアPKO、東ティモ−ルPKO、ルワンダ難民救援、ゴラン高原PKOなどの実態が記されています。
<感 想>
自衛隊の海外派遣は、1993年のカンボジアPKOから始まります。すでに30年近くの歴史があるのです。現地に派遣された自衛隊員が、憲法の規定内でどう任務を遂行したかが詳しく書かれています。ほかの国々が軍隊として当然出来ることを自衛隊は出来ず、他の国の軍隊の理解を得るのに苦労した状況も書かれています。
ジュバ・クライシス後の2019年以来、自衛隊の海外派遣は行われていません。この戦闘がどれほど危険な状況であったかを示していると思います。
今、防衛費を2倍にする話が具体化しようとしています。しかし、日本国憲法の先進性によって助けられてきた海外での様々な活動が危機に瀕する可能性があります。「戦争をしない国 日本」というブランドに傷が付くことが懸念されます。