「トンネル技術者のための施工 DX・地山評価技術」講演会 ― 2026/01/21 19:08
2026年1月9日午後1時から午後5時まで表記講演会が開かれました。
<「トンネル技術者のための施工 DX・地山評価技術」講演会~光ファイバーおよび AI 活用に関する最新技術~> で、主催は(一財) 災害科学研究所 トンネル調査研究会です。
Zoomウェビナーで視聴しました。
プログラムは以下のとおりです。
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開会挨拶 :(一財)災害科学研究所 トンネル調査研究会委員長 松井 保
基調講演:「スマートマイニング技術の土木分野への応用 -スペクトラム、AI、XR 技術- 」 北海道大学大学院工学研究院 教授 川村 洋平
第 1 部:最新の光ファイバー適用事例
「DFOS 技術の現場施工・維持管理への適用」 鹿島建設株式会社 技術研究所 野中 隼人
「DAS の地質調査への適用」 京都大学大学院 工学研究科 准教授 武川 順一15:10~
第2部:AI 活用によるトンネル施工 DX
「機械学習による山岳トンネルの発破余掘り推定技術」 大成建設株式会社 技術センター課長 坂井 一雄
「肌落ち予測及び切羽地質評価」 (一財)先端建設技術センター 審議役 山本 拓治
「AI を活用した発破パターン設計システム」 株式会社大林組 土木本部 西村 友宏
閉会挨拶 京都大学経営管理大学院 特命教授 大津 宏康
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<川村洋平氏>
2003年に北大工学部の資源工学科で博士号を取得しました。鉱山機械の自動化がテーマでした。しかし、研究室が閉鎖となり筑波大学のシステム情報工学研究科に就職しました。筑波大学にはロボティクスの権威である三田教授がいて、重機の自動化を研究していました。情報工学は分野外でしたが、資源工学と情報工学を結びつけようと考えました。
2012年〜2015年までオーストラリア・パース市のカーティン大学へ行きました。ここでは、今までやってきたことは「化石」であると痛感しました。勉強しながら教えるという生活でした。学生の中には鉱山労働者もいるという大学です。
2015年〜2016年、筑波大学のシステム情報系に在籍しました。情報と土木、鉱山工学と情報がテーマとなりました。
2016年〜2021年まで秋田大学に在籍し、資源の分かる人の育成を行いました。
2021年から北大循環環境システム研究室に在籍しています。金価格の上昇もあり、ゼネコンや調査・設計コンサルタントと共同研究を行っています。
スマートマイニングというのは、資源工学と情報工学を結合させたものです。さらに現在は、これに採掘時の公害防止技術という環境対応が加わり、スマートマイニング+となっています。
鉱山とトンネルの違いは、鉱山は設定する安全率が小さいことです。オーストラリアなどでは鉱山労働者の賃金は年間2,000万円〜5,000万円で、医者の次に高いです。
鉱山での機械の自動化によって賃金が減る可能性がありますが、安全確保は進展します。フェイス(切羽)から人を離せというのが基本です。さらに、2050年のノーエミッション・ノーエントリーを目標に、2040年には実装技術を実現することになっています。
AIの進歩により2027年には生成AIが自分でデータを探すようになります。シンギュラリティー(技術的特異点)に達してAIが知識を食い始めます。
サイバー(仮想空間)とフィジカル(現実空間)が融合して超スマート社会がやってきます。AI+IoTの社会です。ソサエティ5.0とかインダストリー4.0などありますが、マイニング4.0ではスマートセンサーで重機や人を動かします。同時にデータを収集します。このデータはテラレベルのビッグデータですので人間には判断ができません。
コマツの重機がオーストラリアで稼働していますが、緊急時のストップボタンの仕組みを完成させるのに20年かかりました。ネットワークがボトルネックとなります。スターリングを使うという方法がありますが、導入を禁止している国があります。
坑道で採掘している鉱山は、採掘場所が深部化していて世界で最も深い鉱山は地下3,500mに達しています。技術の進歩によって金属が低濃集でもペイできるようになってきています。環境に配慮し公害をどう抑えるかが問題です。分野横断の技術革新によって、人が入らない鉱山が望ましいあり方になってきます。
コマツは、資源メジャーであるリオティントなどと提携して自律トラックや自律発破などを開発しています。
情報などの目に見えないサービスを提供するサービスカンパニーに求められるのは標準化されていない物同士の連携を付けることです。
現場のデータはビッグデータです。XYZデータを仮想空間に入れて、サイバー空間とフィジカル空間を連携させる技術の社会実装を試みています。
北海道新幹線のトンネルのボーリングコアを用いて、ヒ素濃度を色で表示できるようにしました。ハイパースペクトル画像を用いています。
ドローンとマルチスペクトルカメラで磁鉄鉱探査を行いました。機械学習で砂浜の砂鉄を判定しました。
切羽からの削孔の時にドリルエネルギー解析を行って切羽背面の地質情報を可視化しました。
AIをベースとして切羽の削孔位置を正確に決めます。ドリルジャンボのブームごとに情報が違うのでドリリング抵抗で修正します。
切羽スケッチもAIを用いて行います。
ズリ運搬トラックの過積載は、ドローンで荷台を撮影することで判定します。
要点を押さえた画像を取得すれば品質は維持できます。
トンネル内でドローンを飛ばしデータを取得してモデルを作成できます。トンネルの場合の問題はライティングです。
これらの作業は300万円くらいのワークステーションでできます。
<野中隼人氏>
光ファイバーをセンサーとして使って温度、ひずみ、振動を計測する研究を行っています。
光ファイバー内での後方散乱光には、ラマン散乱光、ブリリアン散乱光、レイリー散乱光があります。レイリー散乱光では光損失を使って振動、温度、ひずみを計測できます。
分布型光ファイバー計測(DFOS:Distributed Fiber Optic Sensing)でトンネルの支保工や吹き付けコンクリートの応力を測定できます。
応力については、従来のセンサーと同じ精度があります。ボーリング孔内に光ケーブルを設置して岩盤の変位を計測できます。
コンクリートを打設したダム底面のひずみと温度の計測が可能です。
トンネルの維持管理では覆工の載荷試験を行うことができます。
将来的には計測器を低価格にすることや10km程度の長い光ケーブルでの計測を考えています。
<武川順一氏>
京都大学の資源系の研究室で物理探査の研究を行っています。
分散型音響センシング(DAS:Distributed Acoustic Sensing)は高密度のデータが取れ、安価です。計測器はインテロゲータ(光信号の送受信機)です。
光はファイバー内を全反射屈折しながら伝播します。この時、ファイバー内の欠陥で後方反射が発生します。ファイバーが縮むと散乱光の位相が変化します。この位相の変化でファイバーのひずみを計測できます。
トンネルの切羽前方探査を、この方式で行いました。切羽前方の不連続面からの反射波を切羽後方の壁面に設置したファイバーで捉えます。
トンネル方向(X成分)と鉛直方向(Z成分)の受信波形から地震探査で言う走時曲線(時間と距離のグラフ)が得られます。ただし、ひずみ計測には方向依存性があります。これを解消するために光ファイバーを巻き付けてひずみの6成分を計測します。
S波を使った切羽前方イメージングが、精度が高いです。
<坂井一雄氏>
トンネルの掘削作業は、フルオートコンピュータジャンボで可能になりました。自動削孔を行い自動発破設計が可能です。余掘り厚の指標が重要になります。余掘りが大きいとズリが増加し、余掘りが小さいとブレーカーなどによる凸部の除去が必要になります。岩盤条件に応じた余掘り厚を推定するために、余掘り量を目的変数とし最外周の発破孔の削孔条件を説明変数として機械学習を行い、余掘り量を推定しました。この際、削孔ドリルのすぐ後ろに着けたセンサーでジャンボの負荷やドリルの削孔速度をモニタリングするMWD(Measurement While Drilling)データも参考にしました。また、切羽面の描画システムも開発しました。
余掘り厚の測定は、3D-LiDARとプリズムを積んだバギー車で行いました。
機械学習のために余掘り量の定義を行いました。最外周の発破孔を基準に平均余掘り厚を決め、2段階学習法とカスケードモデルを用いて精度向上を図りました。硬質な岩盤ではアタリ(トンネル側に突出した部分)の推定精度が著しく低下します。データが少ないためです。線形補間でアタリの学習データを増やすことや良質なデータを揃えることが必要です。
<山本拓治氏>
AIによって肌落ち予測と切羽地質評価を試みています。切羽の安全確保と切羽評価のバラツキを減らすことが目的です。
トンネル切羽での肌落ち事故を防ぐために肌落ち監視専任者(切羽監視責任者)が配置されています。しかし、事故は発生しています。そこで、最新技術を使って切羽の安全を確保することが求められています。
その基礎となるのが切羽地質評価ですが、観察者による評価のバラツキが大きいのが実態です。1万件以上の切羽観察データをもとにAIによる定量評価を行いました。
53トンネルの16,4238切羽のデータを集めました。画像の前処理、色補正、支保工を隠すなどのマスク処理を行いました。教師データの精度向上のため切羽画像の品質をチェックし、評価のつけ間違いなどを修正しました。こうして新規画像データを作成しました。
切羽画像は、切羽スケッチと同じように左肩、天端、右肩に分けて評価を行いました。一ランクの違いは許容することにした場合、観察結果とAIの評価の一致率は95%でした。
肌落ち予測システムを構築しました。教師データが不足していたので、地質技術者による教師データの作成を行いました。
ドローンやロボットを利用して、人が切羽に立ち入らない切羽観察技術の開発が必要です。動画や生成AI技術の利用が考えられます。
最終判断は人が行うことが大事です。肌落ちは安全側に評価し、経験の少ない技術者でも切羽評価が正しく行えることを目指します。そのためには、切羽観察データベースが必要です。
<西村友宏氏>
トンネル工事では、肌落ちや重機による災害リスクがあり、技能者不足による品質低下のリスクもあります。
掘削はコンピュータジャンボで行い、地山の硬軟と発破孔の孔間隔などのデータ取得、切羽写真での地山評価が行われ、点群データで削孔位置の修正を行います。
発破実績データを分析しました。その際、ドリルの押し出し圧(フィード圧)と削孔速度の489データから、一定のフィード圧での削孔速度(正規化削孔速度比)を指標として単位面積当たりの孔数、発破孔の間隔、単位体積当たりの薬量の相関を取りました。
深層学習を用いた地山評価では、ジャンボのデータは使いませんでした。その理由は、ジャンボのデータはすでに掘削済みの地山のデータだからです。切羽の凹凸など切羽形状に合わせて削孔位置を変更しました。
<感 想>
最新のトンネル技術が分かる講演会でした。私には詳しい内容は分からないことが多々ありますが、急速にトンネル技術が進歩していることを実感しました。
松井 保氏の開会挨拶、大津宏康氏の閉会挨拶も印象的でした。
講演資料(パワーポイント)は、247頁の充実したものです。