高木仁三郎市民科学基金 2024年度国内枠助成 成果発表会 ― 2025/10/04 11:19
2025年9月27日、午前10時から午後4時まで表記発表会が開かれました。Zoomで視聴しました。
高木仁三郎市民科学基金(高木基金)は、2000年10月に亡くなった高木仁三郎氏の <次の時代の「市民科学者」をめざす個人やグループに資金面での奨励・育成を行ってほしい> との遺言にもとづいて創設されました。
原田浩二さん「市⺠によるPFAS調査のための化学分析基盤の構築(第2期) 」から始まって、藤⽥ 康元さん「実践・市⺠放射能測定室の作り⽅〜市⺠が培った確かな測定技術の継承を⽬指して〜 」まで、12件の発表がありました。
<原⽥ 浩⼆さん:市⺠によるPFAS調査のための化学分析基盤の構築(第2期) >
PFASの検査に行政が応えないため2024年度調査では土壌、水質、血液について検査を行いました。
京都府・綾部市では若狭湾に注ぐ由良川支流の犀川で指針値越えのPFASが検出されました。上流に廃棄物処分場があります。
京都府・福知山市では芦渕浄水場で目標値を超えるPFASが検出されました。上流に最終処分場があります。
岐阜県の各務原市では血液検査を行いました。水源に近い住民、特に小児が要注意です。
岡山県の吉備中央町では使用済み活性炭から高濃度のPFOAおよびハイドロPFASが検出されました。
三重県の四日市市ではキオクシアの半導体工場や最終処分場の排水からPFASが検出されました。
相模原市の南橋本には3Mジャパンの工場の敷地内にある観測井戸からPFASが検出されました。キャンプ座間の泡消化剤由来と思われるPFAS類が検出されています。
熊本市の井芹川では表層土の調査が必要です。
PFASを低コストで分析できる簡易分析法の開発を行っています。調査の対象としては、工場、自衛隊や米軍の基地、最終処分場です。
<青木一政さん:リネン吸着法(LAM)の吸着メカニズムの解析と絶対値評価>
大気中のセシウムをリネン(亜麻布)に吸着させて、セシウム量の測定を行っています。リネン吸着法(LAM)と呼んでいます。
宮城県大崎市の玉造クリーンセンターで放射能に汚染された廃棄物を一斉に焼却したときに大気中にセシウム粉塵が漏れたことをこの方法で立証しました。
大気中のセシウム粉塵濃度測定の標準方法であるハイボリューム・エアダストサンプラー(ハイボル)との比較を行って、LAMでの測定値をハイボル測定値に変換する目処が立ちました。
<川端眞由美さん:⽊質バイオマス発電による放射能汚染の拡散調査>
木質バイオマス発電は、「木を燃やす火力発電」です。
軽井沢の西にある東御(とうみ)市では、信州ウッドパワー(株)が木質バイオマス発電で放射能に汚染された木材を燃料として使いました。リネン吸着法で計測したところ、稼働から3年間は基準以下でしたが、3年後に535.9Bq/kg、2024年には810.1Bq/kgと急増しました。この原因は、最初は放射能に汚染された地域の木材は避けていたのだけれど、足りなくなったので汚染地域から伐採して持ってきた可能性が考えられます。
この発電所の煙突から上る煙をタイムラプスカメラで撮影しました。
<島⽥ 清⼦さん・森 妙⼦さん:関⻄電⼒が計画する使⽤済核燃料サイト内乾式貯蔵施設の建設に関わる30km圏内関⻄住⺠への⼾別訪問調査>
関西電力は、使用済み核燃料を原発敷地内で乾式貯蔵する方針です。これについて30km県内の住民にアンケート調査を行いました。
関西電力では燃料プールが逼迫しています。容量1,730tUのうち1,520tUをすでに使用しています。高浜原発は3年で満杯になります。そこで、2028年には乾式貯蔵施設を運転することにしています。問題点は次のとおりです。
1) 敷地が狭い
2) 自然対流が可能か
3) 気温上昇した場合もキャスクの冷却が可能か
そこで、高浜原発から30km圏内の京都府住民にアンケート調査を行いました。回答があったのは857枚で、78%の人が乾式貯蔵を知らないと答えています。
一方、関電は福井県に50億円の寄付を申し出ています。福井県知事が乾式貯蔵施設を了承する条件は、1)六カ所再処理工場の2026年までの完成、2)国の厳正な審査、3)2035年までに中間貯蔵施設へ搬出、4)50億円の寄付などの地域振興、です。
9月議会では結論を先送りしました。
岡村 聡さん:北海道寿都町と神恵内村における核ゴミの地層処分⽂献調査の批判的検証−「磯⾕溶岩」・「熊追⼭安⼭岩」の放射性年代測定による第四紀⽕⼭の認定−
高レベル放射性廃棄物地層処分場の候補地として、北海道の神恵内村と寿都町が2020年に名乗りを上げました。2024年にその報告書が公開され、パブリックコメントの募集は終わりました。事業主体のNUMOは北海道知事と両町村長に対して概要調査に進みたいと申し入れています。
2023年10月30日に地学の専門家300人あまりが「世界最大級の変動帯の日本に、地層処分の適地はない-現在の地層処分計画を中止し、開かれた検討機関の設置を-」という声明を発表しました。そこでは、現状、日本では高レベル放射性廃棄物の地層処分は不可能と言っています。
それに先立つ11年前の2012年9月に、日本学術会議が「暫定保管および総量管理を柱とした政策枠組みの再構築」を提案しています。
変動帯の日本では地層処分の適地はなく、今の技術ではどのような事態が起こるか予測することはできません。
<感 想>
それぞれ発表時間は30分で、さまざまな話題がありました。どの研究も市民科学の威力を発揮した内容です。
福島第一原発の事故に伴って発生した放射能汚染物質が、全国にばらまかれつつあります。原子力情報資料室と高木仁三郎市民科学基金の役割は、ますます大きくなると思います。
この発表会のスライドは、高木基金のウェブサイトから手に入れることができます。
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