第65回 K&i ウェブアカデミーウェビナー ― 2026/10/26 18:26

 2026年10月23日(金)、午後2時30分から同4時5分まで表記講演会が開かれました。『「道路土工構造物技術基準」改定! 性能規定の在り方と限界状態の設定・照査方法など』です。

 ウェビナー開始時の視聴者は、1,290名でした。

 

[講師]大阪大学名誉教授 常田(ときだ) 賢一氏「道路土工構造物の技術的課題&新たな2つの脅威

 -技術的課題:道路土工構造物技術基準の性能規定の在り方、

 新たな脅威(1):令和6年能登半島地震の鉛直地震動、

 新たな脅威(2):令和8年熊本地震の地震断層-」

 

[講師]株式会社シビル代表取締役 窪田 潤平 氏「道路土工構造物技術基準の改定に伴う高エネルギー吸収型ポケット式落石防護網の限界状態の設定と照査方法」

 

<常田賢一氏>

 道路土工構造物技術基準が2025年に改正され、性能設計と数値解析が取り入られました。従来用いられていた仕様設計はAIでできます。上記技術基準は施工が重点になっていること、数値解析ソフトの確からしさの評価が問題です。


 1995年の阪神淡路大震災で橋梁の落橋が発生し、道路橋示方書は変形を許容する性能設計が導入されました。

 2025(令和七)年に「道路土構造物技術基準」が改定されました。性能設計による許容すべり量、残留変形解析などが取り入れられました。

 性能規定の具体化に当たって改正の趣旨が遵守されるかが課題です。 同解説には、2025年の能登半島地震での被害を踏まえ、排水対策と性能規定が謳われています。しかし、「総合的判断」とか「相場観」と言った曖昧な言葉が使われています。


 地震動の作用については、「供用期間中に発生することは極めて稀であるが一旦生じると道路土工構造物に及ぼす影響が甚大であると考えられる地震動」(レベル2地震動)は、レベル1地震動についての照査を行えば省略して良いとされています(見なし規定)。


 盛土の安定を照査するには、許容変位を決めて残留変位法で検討することが必要ですが、肝心の許容変位の定義がありません。変位量を出すことができない円弧すべり法での検討ではなく、残留変位法が必要です。安定解析法の妥当性、確からしさの検討が必要です。

 また、盛土の標準のり勾配が万能ではないことが能登半島地震では示されました。

 道路構造物の被害と道路の被害は異なリます。


 一般的に、盛土には地下水位を想定していませんが、これが妥当かどうかの検討が必要です。現場の実態と合っていません。現場に合わせた設計が必要で、これはAIにはできないことです。

 能登半島地震では土留め擁壁は無事でしたが、擁壁上部の斜面が崩壊しました。

 

 落石については、落下中も道路空間を犯さないことが必要です。実物の落下試験で検討する必要があります。

 

 設計と施工の整合性を取る必要があります。設計段階では盛土の粘着力と内部摩擦角で安定性を検討しますが、施工では締固め度が基準になっています。


 ICT土工では形状を測り数量を出しますが、品質の管理が重要です。

解析ソフトについては、現場の検証と妥当性の確認を行い評価することが必要です。

 

 構造物の安定性を検討する場合、地震による鉛直振動の検討が必要です。2011年の東北沖太平洋地震では、津波による浸水で浮力が働き建物が転倒した事例がありました。

 2025年の能登半島地震では、上下動により構造物に上向きと下向きの振動が働き、荷重が増加したり杭が引き抜かれたりしました。

 

 2026年の熊本地震では地震断層により橋梁に被害が出ました。

 九州自動車道の川田橋、片野川橋、妙見第一橋で、いずれも平地と山地の境界部にある橋です。片野川橋では1.3m、妙見第一橋では1.4mの段差が発生しました。断層線を跨いでいる橋です。

 このような被害を防ぐには理学と工学の連携が必要です。断層の方向と橋軸方向との関係、断層による(予想)変位量が必要です。

 今回の熊本地震では予想されていた活断層の位置と実際の断層変位の位置がずれていました。地下探査を行い地下の状況をより詳しく調べ、断層線をより正確に推定する必要があります。

 

<窪田潤平氏>

 窪田氏の講演については、株式会社シビルの「ホームページ>強靱防護網」に分かりやすい解説と動画があります。「強靭防護網ネットタイプ 性能照査解説動画」はなかなか迫力があります。

 

<感 想>

 土構造物はコンクリート構造物のように、ほぼ一体で挙動しないという難しさがあると思います。性能規定が設計、施工にうまく取り入れられるか注目です。

 熊本地震では九州自動車道の活断層上の橋に変位が出たことは、今後、地形・地質関係者が考えなければならない問題を提起していると思いました。

 構造物に地震による鉛直振動を考えなければならないという指摘も重要だと思いました。

 

 なお、常田氏の今回の講演の盛土に関する内容は、(一社)地域国土強靱化研究所のウェブサイトからダウンロードできます。今回の講演も同ホームページで公開されると期待します。

< LRRI技術資料、2026年3月 Vol. 4 No.1 防災・減災、国土強靭化のための発想の転換および先取り技術・工法-道路盛土のすべり崩壊、傾斜地の液状化・地盤流動、堤防の越流破堤など- 常田賢一 >

 また、「常田賢一・片岡正次郎、活断層とどう向き合うか。理工図書、2012年11月」という本を出しています。



本の紹介:教養としての量子コンピュータ ― 2026/10/26 21:49

量子コンピュータ

 藤井啓祐、教養としての量子コンピュータ。ダイヤモンド社、2025年11月。

 

 1章  量子力学100年史 から始まって、6章 量子コンピュータと私たち まで、読んでみたものの、やはりよく分かりません。

 

 「はじめに」で著者は、こう述べています。

 『勉強すればするほど、「量子もつれ」、「量子テレポーテーション」、「魔法蒸留」といったSFを彷彿とさせる世界のキーワードが飛び交う——。

 私が量子コンピュータに夢中になった理由は、(中略)空想科学を独り占めできるという、ちょっとした「可笑しみ」に原点がある。』

 

量子コンピュータの開発・研究には、GoogleやIBMといった民間企業が主役を担っているというのも面白いことだなと思います。量子AIができれば無敵のような気がします。

 

興味のある人は「QUANT ATTACK」というゲームで量子コンピュータを体感するのが良いかもしれません。