2026年の歩くスキー大会2026/02/20 20:27

 2026125日、21日、28日と、3週続けて歩くスキー大会に出ました。

 

2026 HBCラジオ ハウス 歩くスキー大会 10km

 2026125日(日)に開催されました。会場は白旗山競技場です。

 

 会場へは地下鉄大谷地駅からの送迎バスで行きました。大谷地駅から地上に出た時には、やや横殴りの雪が降っていました。


2026年1月25日白旗山

スタート前の状況

 

 スタート前は遠くがかすむほどの雪の降り方で、風も少しありました。

 5kmコースを2周するのですが、2週目の6km過ぎで、コース案内看板を回収するスノーモービルに追われるようになりました。スキーが全くすべらず、滑走面に雪がくっつく状況でした。スキーを履いて歩くのはあきらめて、ゴール手前までスノーモービルに乗せてもらい、最後はスキーを担いで走ってゴールしました。

 長いことクロスカントリースキーをやっていますが、初めての経験でした。木々に積もった雪がコース上に落ちてくると、スキーはすべらなくなります。理由は分かりません。強風にさらされた雪のすべりも悪いですが、これは多分、滑走面で雪が融けにくくて滑らないのだろうと考えています。

 

<第46回 札幌国際スキーマラソン大会 10km

 202621日(日)に白旗山競技場で行われました。

 前週のことがあったので非常に不安でしたが、天気は良くスキーはよく滑りました。

 

 コースは前週とほぼ同じで、5kmコースを2周します。スタートして少し行ったところに急な上りがあります。あとは上り下りを繰り返しながら競技場に戻ってきて、もう一周します。

 10km男子で完走した人の中で後ろから3番目でしたが、辛うじて1時間30分を切ることができました。

 コースは整備されていてスキーも滑り、気持ちよく歩くことができました。参加費がちょっと高いですが、これからも出ようと思っています。

 

 この大会は、ワールドロペットの大会なので、外国人も結構参加しています。かつては50km25kmのコースでしたが、コースの整備がままならないのか、最近は10kmコースを周回するようになりました。

 さらに前は、羊ヶ丘展望台付近がスタート、ゴールで、50kmは白旗山競技場が30km地点になっていて、30kmの記録も取ってくれていました。

 

 なお、ワールドロペット大会というのは、世界中の20の長距離クロスカントリースキー大会で作っている組織が認証した大会のことです。ロペット(Loppet)は、元来スウェーデン語で、「ゆっくり走る」という意味だそうです(weblio辞書 による)。ただし、Deepleで翻訳すると

 the race と出てきます。GoogleAIの回答も「走る」または「レース/競技」となります。

 

<第36回 おおたき国際スキーマラソン大会 7km

 202628日(日)に伊達市大滝区の長流川左岸の大滝運動公園をスタート・ゴールで行われました。

 

 この日も条件は良く、気持ちよく歩くことができました。運動公園をスタートして1km半ほど緩やかに下っていきます。Uターンして長流川沿いに上って行き、5km手前で再びUターンして運動公園に向かいます。

 ちょっと前は、上流側のUターンの所に崖のような下り坂があったのですが、それはなくなって楽なコースになりました。

 

2026年大滝クロカンコース図

大滝スキーマラソンコース図

 

 それにしても、クロスカントリースキー大会の参加者は激減しています。今、冬季オリンピックで盛り上がっていますが、この先どうなるのか心配です。

 

 札幌市内の公園に設置されているクロスカントリースキーのコースも、あまり整備されていないことが多いです。

 誰もが冬のスポーツを楽しめる環境が整えば良いのになと思います。底辺の広がりがなくなれば一線級の選手も出てこなくなるでしょう。



第64回 試錐研究会2026/02/20 13:10

道立研究機構 エネルギー・環境・地質研究所主催の第64回 試錐研究会が、2026218日(水)午後1時から午後510分まで、札幌サンプラザで開かれました。

  特別講演2件と一般講演3件がありました。Zoomで視聴しました。

プログラムは下記のとおりです。

 

 なお、第64回 試錐研究会の講演資料は、エネ環地研のホームペジからダウンロードできます(2026220日 確認)。

( https://www.hro.or.jp/industrial/research/eeg/index.html >新着情報>20251224日「第 64 回試錐研究会(CPD 対象)」を開催します【2026 2/18(水)】 )

 

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■ 開会の挨拶

北海道立総合研究機構 エネルギー・環境・地質研究所 所長 山越 幸康

 

■ 特別講演

径違いのビットを切り替えて行う二重ビットコアリングによる地殻応力測定法の開発

東北大学 流体科学研究所教授 伊藤 高敏

 

苫小牧 CCS 実証試験について

日本 CCS 調査株式会社 苫小牧 CCS 実証試験センター センター長 石和田 彰

 

■ 一般講演

全国地質調査業協会連合会 新しい時代の地質調査技術検討 WG の活動紹介~災害時に活用できる地質調査技術カタログの作成~

応用地質株式会社 DX 推進本部 副本部長 兼 共創 Lab 副所長 濱田 俊介

 

レッカ型帯水層の調査方法について

株式会社アクアジオテクノ 技術部 資源開発グループ 主任 高橋 昂甫

 

温泉法に基づく許可申請について

北海道保健福祉部健康安全局食品衛生課 環境衛生係長 笹川 朋哉

 

■閉会の挨拶

北海道地質調査業協会 理事長 千葉 新次

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 興味を持った発表の概要を紹介します。

 

<伊藤高敏氏>

 研究分野は岩石力学あるいはジオメカニクスです。

 

 シェールガスの開発、二酸化炭素地下貯留、地殻応力などの研究を行ってきました。


 地熱流体の移動は、臨界状態にある断層が主役となっています。このような断層を探るためには、地殻応力の測定を深度2,000m、温度200-300の条件で行う必要があります。地殻応力の測定は水圧破砕法がありますが、この方法は高温に耐えられません。そこで、応力解放法を開発しました。

 

 地殻応力は、岩盤の自重が作用する鉛直応力と水平面内での最大主応力、最小主応力があります。水平面内での応力はプレート運動によって発生する成分で、深度とともに線形に増加します。なので、外挿が可能です。深度1kmあたり25MPaの割合で増加します。

 

 断層に作用する応力のうち、鉛直応力は正断層では最大応力になり、逆断層では最小応力、横ずれ断層では中間応力となります。断層でずれると隙間ができます。この運動は、せん断変形で体積変化はありません。透水性岩盤は、鉛直に近いすべり割れ目を持っています。非透水性岩盤では、すべらない割れ目があります。割れ目の向きは最大応力の向きです。

 

 地熱地帯での応力測定で採取されたコアは楕円形に膨張します。膨張量に弾性係数をかけた値が地殻応力になります。

 この膨張量を正確に測るために二重ビットコアリング法(DBC法:Dual Bit Coring法)を開発しました。この方法は、内溝(径の小さいビット)である程度掘削した後、外溝(径の大きいビット)で内溝より深くまで掘削します。その後、内溝でさらに深くまで掘削し地殻応力で変形していないコアを採取します。採取したコアの直径を全周にわたって測定し、またヤング率の測定も現場で行います。数値的におかしければ、すぐにもう一度試料採取を行います。コアの方位はビットに連結しているロッドの地表部で測定します。

 模擬岩体を作成し室内実験を行いました.また、数値シミュレーションで測定原理の検証も行いました。

 

 岐阜県の神岡鉱山で試験を行いました。土被りは500mです。北上や登米でも試料採取と試験を行い、北西-南東方向に膨張していることを明らかにしました。

 

<石和田 彰氏>

 都立大学を卒業後、三菱ガス化学に入社しました。アンモニアやメタノールを扱ってきました。

 

 CCSCarbon dioxide Capture Storage )というのは、削減しきれない二酸化炭素を地中に埋めるということです。

 

 2008年に苫小牧で実験を始めました。二酸化炭素の分離・改修・利用・輸送・地中貯留を扱います。輸送は、トラックや鉄道、パイプラインも考えられますが、船舶輸送が現実的です。

 

 地下貯留には貯留層となる砂岩などの隙間の多い岩盤とその上部に泥岩などの遮水層が必要です(構造トラップ)。そのほかに、残留トラップ・溶解トラップ・鉱物トラップなどがあります。


 日本では、11地点で160億トンの貯留が可能です。

 二酸化炭素の発生源としては、火力発電所、セメント工場、製鉄所、化学工場などがあります。

 二酸化炭素の回収方法としては、アミンに吸収させる、吸収+膜を使う、膜分離、吸着などの方法があります。吸着が最もコストがかかりません。幾つかの手法を併用するのが現実的です。

 

 二酸化炭素の排出量は、中国、アメリカ、欧州連合、インド、ロシアについで日本は6番目に多い国です。日本は、二酸化炭素排出量1112億トンの内1.22.4億トンをCCSで処理する方針です。


 国内では、新潟県の頸城油田、秋田県男鹿市の申川油田、長岡地域などで CO2圧入試験を行っています。

 

 この後、苫小牧における実証試験の詳しい話がありました。

 途中から掘削方向を曲げる傾斜井、貯留槽中の二酸化炭素のモニタリングのための反射法探査、二酸化炭素の圧入による人工地震発生のモニタリング、海洋環境調査など第一級の地質調査技術が使われています。

 

<感 想>

 地殻応力の測定は非常に魅力的な技術です。地下空間を安全に構築するには、どの程度の初期地圧がどの方向から作用しているかが重要です。

 ただ、この方法では、一定の長さのコアの採取が必要で岩盤状況の悪い場合は使えないのでしょう。



「トンネル技術者のための施工 DX・地山評価技術」講演会2026/01/21 19:08

 202619日午後1時から午後5時まで表記講演会が開かれました。

 <「トンネル技術者のための施工 DX・地山評価技術」講演会~光ファイバーおよび AI 活用に関する最新技術~> で、主催は(一財災害科学研究所 トンネル調査研究会です。

 Zoomウェビナーで視聴しました。

 

 プログラムは以下のとおりです。

 

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開会挨拶 :(一財)災害科学研究所 トンネル調査研究会委員長 松井 保

 

基調講演:「スマートマイニング技術の土木分野への応用 -スペクトラム、AIXR 技術」 北海道大学大学院工学研究院 教授 川村 洋平

 

 1 部:最新の光ファイバー適用事例

DFOS 技術の現場施工・維持管理への適用」 鹿島建設株式会社 技術研究所 野中 隼人

DAS の地質調査への適用」 京都大学大学院 工学研究科 准教授 武川 順一15:10

 

第2部:AI 活用によるトンネル施工 DX

「機械学習による山岳トンネルの発破余掘り推定技術」 大成建設株式会社 技術センター課長 坂井 一雄

「肌落ち予測及び切羽地質評価」 (一財)先端建設技術センター 審議役 山本 拓治

AI を活用した発破パターン設計システム」 株式会社大林組 土木本部 西村 友宏

 

閉会挨拶 京都大学経営管理大学院 特命教授 大津 宏康

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<川村洋平氏>

 2003年に北大工学部の資源工学科で博士号を取得しました。鉱山機械の自動化がテーマでした。しかし、研究室が閉鎖となり筑波大学のシステム情報工学研究科に就職しました。筑波大学にはロボティクスの権威である三田教授がいて、重機の自動化を研究していました。情報工学は分野外でしたが、資源工学と情報工学を結びつけようと考えました。

 2012年〜2015年までオーストラリア・パース市のカーティン大学へ行きました。ここでは、今までやってきたことは「化石」であると痛感しました。勉強しながら教えるという生活でした。学生の中には鉱山労働者もいるという大学です。

 2015年〜2016年、筑波大学のシステム情報系に在籍しました。情報と土木、鉱山工学と情報がテーマとなりました。

 2016年〜2021年まで秋田大学に在籍し、資源の分かる人の育成を行いました。

 2021年から北大循環環境システム研究室に在籍しています。金価格の上昇もあり、ゼネコンや調査・設計コンサルタントと共同研究を行っています。

 

 スマートマイニングというのは、資源工学と情報工学を結合させたものです。さらに現在は、これに採掘時の公害防止技術という環境対応が加わり、スマートマイニング+となっています。

 鉱山とトンネルの違いは、鉱山は設定する安全率が小さいことです。オーストラリアなどでは鉱山労働者の賃金は年間2,000万円〜5,000万円で、医者の次に高いです。

 鉱山での機械の自動化によって賃金が減る可能性がありますが、安全確保は進展します。フェイス(切羽)から人を離せというのが基本です。さらに、2050年のノーエミッション・ノーエントリーを目標に、2040年には実装技術を実現することになっています。

 AIの進歩により2027年には生成AIが自分でデータを探すようになります。シンギュラリティー(技術的特異点)に達してAIが知識を食い始めます。

 

 サイバー(仮想空間)とフィジカル(現実空間)が融合して超スマート社会がやってきます。AIIoTの社会です。ソサエティ5.0とかインダストリー4.0などありますが、マイニング4.0ではスマートセンサーで重機や人を動かします。同時にデータを収集します。このデータはテラレベルのビッグデータですので人間には判断ができません。

 コマツの重機がオーストラリアで稼働していますが、緊急時のストップボタンの仕組みを完成させるのに20年かかりました。ネットワークがボトルネックとなります。スターリングを使うという方法がありますが、導入を禁止している国があります。

 

 坑道で採掘している鉱山は、採掘場所が深部化していて世界で最も深い鉱山は地下3,500mに達しています。技術の進歩によって金属が低濃集でもペイできるようになってきています。環境に配慮し公害をどう抑えるかが問題です。分野横断の技術革新によって、人が入らない鉱山が望ましいあり方になってきます。

 コマツは、資源メジャーであるリオティントなどと提携して自律トラックや自律発破などを開発しています。

 情報などの目に見えないサービスを提供するサービスカンパニーに求められるのは標準化されていない物同士の連携を付けることです。

 

 現場のデータはビッグデータです。XYZデータを仮想空間に入れて、サイバー空間とフィジカル空間を連携させる技術の社会実装を試みています。

 北海道新幹線のトンネルのボーリングコアを用いて、ヒ素濃度を色で表示できるようにしました。ハイパースペクトル画像を用いています。

 ドローンとマルチスペクトルカメラで磁鉄鉱探査を行いました。機械学習で砂浜の砂鉄を判定しました。

 切羽からの削孔の時にドリルエネルギー解析を行って切羽背面の地質情報を可視化しました。

 AIをベースとして切羽の削孔位置を正確に決めます。ドリルジャンボのブームごとに情報が違うのでドリリング抵抗で修正します。

 切羽スケッチもAIを用いて行います。

 ズリ運搬トラックの過積載は、ドローンで荷台を撮影することで判定します。

 要点を押さえた画像を取得すれば品質は維持できます。

 トンネル内でドローンを飛ばしデータを取得してモデルを作成できます。トンネルの場合の問題はライティングです。

 これらの作業は300万円くらいのワークステーションでできます。

 

<野中隼人氏>

 光ファイバーをセンサーとして使って温度、ひずみ、振動を計測する研究を行っています。

 光ファイバー内での後方散乱光には、ラマン散乱光、ブリリアン散乱光、レイリー散乱光があります。レイリー散乱光では光損失を使って振動、温度、ひずみを計測できます。

 分布型光ファイバー計測(DFOSDistributed Fiber Optic Sensing)でトンネルの支保工や吹き付けコンクリートの応力を測定できます。

 応力については、従来のセンサーと同じ精度があります。ボーリング孔内に光ケーブルを設置して岩盤の変位を計測できます。

 コンクリートを打設したダム底面のひずみと温度の計測が可能です。

 トンネルの維持管理では覆工の載荷試験を行うことができます。

 将来的には計測器を低価格にすることや10km程度の長い光ケーブルでの計測を考えています。

 

<武川順一氏>

 京都大学の資源系の研究室で物理探査の研究を行っています。

 分散型音響センシング(DASDistributed Acoustic Sensing)は高密度のデータが取れ、安価です。計測器はインテロゲータ(光信号の送受信機)です。

 光はファイバー内を全反射屈折しながら伝播します。この時、ファイバー内の欠陥で後方反射が発生します。ファイバーが縮むと散乱光の位相が変化します。この位相の変化でファイバーのひずみを計測できます。

 トンネルの切羽前方探査を、この方式で行いました。切羽前方の不連続面からの反射波を切羽後方の壁面に設置したファイバーで捉えます。

 トンネル方向(X成分)と鉛直方向(Z成分)の受信波形から地震探査で言う走時曲線(時間と距離のグラフ)が得られます。ただし、ひずみ計測には方向依存性があります。これを解消するために光ファイバーを巻き付けてひずみの6成分を計測します。

 S波を使った切羽前方イメージングが、精度が高いです。

 

<坂井一雄氏>

 トンネルの掘削作業は、フルオートコンピュータジャンボで可能になりました。自動削孔を行い自動発破設計が可能です。余掘り厚の指標が重要になります。余掘りが大きいとズリが増加し、余掘りが小さいとブレーカーなどによる凸部の除去が必要になります。岩盤条件に応じた余掘り厚を推定するために、余掘り量を目的変数とし最外周の発破孔の削孔条件を説明変数として機械学習を行い、余掘り量を推定しました。この際、削孔ドリルのすぐ後ろに着けたセンサーでジャンボの負荷やドリルの削孔速度をモニタリングするMWDMeasurement While Drilling)データも参考にしました。また、切羽面の描画システムも開発しました。

余掘り厚の測定は、3D-LiDARとプリズムを積んだバギー車で行いました。

 機械学習のために余掘り量の定義を行いました。最外周の発破孔を基準に平均余掘り厚を決め、2段階学習法とカスケードモデルを用いて精度向上を図りました。硬質な岩盤ではアタリ(トンネル側に突出した部分)の推定精度が著しく低下します。データが少ないためです。線形補間でアタリの学習データを増やすことや良質なデータを揃えることが必要です。

 

<山本拓治氏>

 AIによって肌落ち予測と切羽地質評価を試みています。切羽の安全確保と切羽評価のバラツキを減らすことが目的です。

 トンネル切羽での肌落ち事故を防ぐために肌落ち監視専任者(切羽監視責任者)が配置されています。しかし、事故は発生しています。そこで、最新技術を使って切羽の安全を確保することが求められています。

 その基礎となるのが切羽地質評価ですが、観察者による評価のバラツキが大きいのが実態です。1万件以上の切羽観察データをもとにAIによる定量評価を行いました。

 53トンネルの16,4238切羽のデータを集めました。画像の前処理、色補正、支保工を隠すなどのマスク処理を行いました。教師データの精度向上のため切羽画像の品質をチェックし、評価のつけ間違いなどを修正しました。こうして新規画像データを作成しました。

 切羽画像は、切羽スケッチと同じように左肩、天端、右肩に分けて評価を行いました。一ランクの違いは許容することにした場合、観察結果とAIの評価の一致率は95%でした。

 肌落ち予測システムを構築しました。教師データが不足していたので、地質技術者による教師データの作成を行いました。

 ドローンやロボットを利用して、人が切羽に立ち入らない切羽観察技術の開発が必要です。動画や生成AI技術の利用が考えられます。

 最終判断は人が行うことが大事です。肌落ちは安全側に評価し、経験の少ない技術者でも切羽評価が正しく行えることを目指します。そのためには、切羽観察データベースが必要です。

 

<西村友宏氏>

 トンネル工事では、肌落ちや重機による災害リスクがあり、技能者不足による品質低下のリスクもあります。

 掘削はコンピュータジャンボで行い、地山の硬軟と発破孔の孔間隔などのデータ取得、切羽写真での地山評価が行われ、点群データで削孔位置の修正を行います。

 発破実績データを分析しました。その際、ドリルの押し出し圧(フィード圧)と削孔速度の489データから、一定のフィード圧での削孔速度(正規化削孔速度比)を指標として単位面積当たりの孔数、発破孔の間隔、単位体積当たりの薬量の相関を取りました。

 深層学習を用いた地山評価では、ジャンボのデータは使いませんでした。その理由は、ジャンボのデータはすでに掘削済みの地山のデータだからです。切羽の凹凸など切羽形状に合わせて削孔位置を変更しました。

 

<感 想>

 最新のトンネル技術が分かる講演会でした。私には詳しい内容は分からないことが多々ありますが、急速にトンネル技術が進歩していることを実感しました。

 松井 保氏の開会挨拶、大津宏康氏の閉会挨拶も印象的でした。

 講演資料(パワーポイント)は、247頁の充実したものです。



本の紹介:絣の着物2025/12/29 17:00

 壺井 栄著、秦 剛編集・解説、絣の着物 壺井栄戦争末期短編集。琥珀書房、20256月。

 

絣の着物 表紙

表紙

 

絣の着物裏表紙

裏表紙

 

 映画にもなった「二十四の瞳」の作者である壺井 栄が、アジア太平洋戦争末期の庶民の日常生活を綴った短編小説です。「絣の着物」と12の短編のほかに「初夏を待つ」と1945815日までの「茶の間日記」が収められています。

 

 どの短編も、しみじみと心に残る余韻をもたらします。

 私は戦前の生活の記憶はありませんが、描かれている風景や登場する人物は子どもの頃の会ったことがあるような人びとです。懐かしさを感じます。

 

 この本の実物は、戦後80年を経た今年、北京で見つかったといいます。国内で発行できず北京で出版されたものが、北京大学図書館外国語学院分館に二冊残っていたのだそうです。1945610日に印刷・発行されたものです。

 

 戦争をしている国の市井の人びとの生活がどんなものなのか、若い人たちに読んでほしいと思います。


2025年度土砂災害予測に関する研究集会2025/12/15 21:32

 2025122日(火)10時から17時まで、防災科学技術研究所主催の表記集会が開かれました。

 テーマは「DX・生成 AI 時代に向けた調査・解析技術の現状と課題」で、2015年に開いた第1回集会と同じ「新技術」を取り上げていました。

 Zoomで視聴しました。

 

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研究集会プログラム


プログラム

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<原口 強氏>

 原口氏は調査設計会社に勤務したあと、大阪市立大学などで教鞭を執ってきました。

 

 近年、災害の重層化が進んでいます。豪雨が発生し、その後地震が発生、さらに豪雨が発生するといった連鎖が起きています。このような事態では、崩れる前の地形の「表情」が大切です。

 地形判読では個々人の判読結果を翻訳して、市民レベルで分かるようにする必要があります。地形画像診断では微地形が表現されています。 レーザ測量で得た地形図を持って地質踏査をすることで地形の表情を読み取り、違和感を持つことが大事です。航空レーザ測量や衛星画像などのデジタル画像では、河道の変遷など地形の時間的な変化を捉えることができます。毎日、毎時間データを更新することができます。

 SAR画像は全天候での観測が可能で、全国の地形画像を残すことができます。さらに、時系列での変化を捉えます。

 デジタルツインによって継続監視が可能となります。専門家が判断の意味を翻訳することが必要です。

 

 AIをどう活用するか。

 AIを使って地形画像から地形分類をすることは可能です。しかし、その地形がどうしてできたのかといったことを説明することはできません。ヒトが納得する形で説明するのは人間です。

 現実の世界で取得したデータをコンピュータ上の仮想空間で再現するデジタルツインでは、差分解析により時間の変化を扱えます。地形・降雨・地質・植生などを一体として解析できます。これにより、複合的なリスクを抽出できます。

 地形の違和感、地形の表情の変化を色で表現することで、住民の納得を得ることができます。災害による危険度を示すマップの更新ができます。危険を理解した上で行動することを支援する仕組みを作ることが大事です。理解に基づく行動を促します。住民の五感は大事ですが正常化のバイアスを破る必要があります。

 デジタルツインでは離れてみることができます。それによって、住民は理解した上で避難行動に移ることができます。臨床医としての防災です。防災地図は毎日更新が可能です。

 さまざまな気象・災害データを地図やグラフ上に一元的に可視化する防災ダッシュボードがあります。必要な情報を一目で見ることができるようにして、迷っている時間をなくして瞬時に避難するための道具です。

 

 AIと人間の関係についてです。

 AIは危険を指摘することはできます。人間は地形の記憶を持っています。災害後の復興では透明性のある復興が重要です。住民の防災リテラシーを高めると同時に、危険を可視化し説得する方法に工夫が必要です。

 

<杉本宏之氏>

 土木研究所ではBIM/CIMの活用を行ってきました。

*)BIM/CIM は、計画、調査、設計段階から次元モデルを導入することにより、その後の施工、維持管理の各段階においても次元モデルを連携・発展させて事業全体にわたる関係者間の情報共有を容易にし、一連の建設生産・管理システムの効率化・高度化を図る取り組みです。(とよおかBIM/CIMポータル より)

 

 地すべり災害対応では、関係機関との情報の共有が重要です。その手段の一つとして、カラー点群データを用いてバーチャルな災害現場を作ります。BIM/CIMモデルの点群データに等高線を加えた画像です。

 

 能登半島の地震と豪雨による斜面崩壊の地形変化を災害前と後の写真を用いて表現します。さらに、UAVの画像を集めて見える化します。

 

 長野県の犀川左岸地すべりは、凝灰岩と泥岩の境界ですべりが発生しました。水が集中する地形です。まず、現状把握を行い、発生機構を推定しました。今回の地すべりは旧地すべりの再活動で、末端の押し出しにより渓流が埋積されました。

 本体の対策、末端の対策、河川閉塞対策、地下水排除工、小崩落防止、事前通告体制の構築など、九つのリスクそれぞれに対応するためマトリクスの対応表を作成しました。

 現地調査を行い、発生機構を推定し、今後どんな現象が起きるか予測しました。

 

 行政面ではじ事業の申請と予算措置、手続きと判断をウェブ会議で行いました。本局、地方整備局、国道事務所の合意形成を一気に行いました。

 ワークフローを作成し、災害対応の標準化とデジタル化を行い、デジタル化を前提とした諸制度の構築が今後必要です。

 

<竹林洋史氏>

 土砂災害のうち土石流災害対策を研究しています。

 

 土砂災害警戒区域の土石流は、扇頂部から下流の勾配が2度以上の渓流が該当します。人的被害が発生する可能性のある地域は、特別警戒区域になります。

 問題は、建物ごとのリスクが違うこと、警戒区域は70万箇所以上になることです。警戒区域内でも安全な場所があります。土石流の流動特性、土石流が流下中に分波を作ること、複数回の土石流が発生することなどが問題です。

 

 iRIC-Morpho2DH を用いて土石流のシミュレーションを行いました。広島市の安佐南区の現場です。

 土石流は渓岸を削って流れていきます。規模、速度からは逃げる時間は80秒で、土石流が発生したら、すぐ逃げることです。ただし、鉄筋の建物は壊れませんから、近くの鉄筋の建物に避難するのが良いです。

 通過土砂量は発生源に近いほど少ないですから、砂防ダムは発生源に近いほど小さなポケットですみます。

 

 安芸郡熊野町川角では土石流の分波が発生し、一部は道路を流れました。微高地には土石流は到達しませんでした。避難しない方が良い場合があります。

 

<古木宏和氏>

 土砂災害の危険度予測を行っています。

 

 画像をAIに深層学習させます。ヒトによる判読はバラツキが生じます。

 広域の地すべり地形判読を行いました。画像を分類し画像変換して地すべり領域を検出します。教師データの選別を行い頭部と末端に注目して判読テストの評価を行いました。結果は8割は当たっていました。紀伊半島の地すべりを教師データとして四国の地すべりを判読しました。斜面のリスクポイントは抽出できています。

 AIで危険度判定を行いました。60枚の訓練データで学習させ20枚のテストデータの危険度判定を行いました。

 

 伝統技術を継承しAIに取り込んでいくことが大事です。

 

<千葉達朗氏>

 地形判読に適した赤色立体地図を作ってきました。

 

 日本列島の接峯面図を250mメッシュの赤色立体地図を用いて作成しました。1989年に藤田和夫氏が作成したものと同じような結果になりました。

 

 DEMのメッシュサイズによる地形の見え方の違いを検討しました。全体として8mメッシュまでは滑らかです。

 房総半島、丹沢山地、富士山南斜面の大淵溶岩流、多摩丘陵、高知県本山町の棚田、北部フォッサマグナ、裾花川などの赤色立体図で検討しました。

 

<鈴木雄介氏>

 2021年に発生した熱海土石流についてです。

 

 20217316時過ぎに盛土崩壊と土石流が発生しました。事前に静岡県の3次元点群データがありました。点群データを活用できる人たちでチームを組み、2009年の国交省データ、2019年の静岡県のデータで盛土量と崩壊土砂量を推定し、盛土の体積は54,000立方メートルと出しました。

 74日にドローンで撮影を行いました。動画からSfMで三次元立体図を作成しました。この際、問題となったのはライセンスでした。

 崩壊の引き金となった水の供給ルートは、狭い範囲の流域からでした。

 77日にドローンのデータが届き、8日に地形図が完成しました。その結果、崩れ残りの土砂があり、その体積を推定することができました。

 AIは人間の思考を拡張し判断の幅を広げる相棒として使えます。データの可視化から知識インフラへと発展させるためにAIが活用できるデータ基盤の整備が重要です。

 

<宇佐美星弥氏>

 干渉SAR画像の時系列解析で斜面変動の抽出を行っています。

 

 SAR画像が分かりにくい理由の一つは、干渉縞で表現されることです。可視化しやすい表現方法を研究しています。

 SAR画像解析の誤差は、1.51.6cmです。干渉SAR画像の時系列解析での誤差は1cm以下にでき年間0.6cm程度です。

 問題としては、衛星視線方向の変位量を過小評価する場合があることです。マイクロ波の散乱場の影響と考えられます。

 地すべり地形に適応したフィルタをかけることで解決できると考えています。

 

<杉本 惇氏>

 SARのピクセルオフセット解析で地表変動を捉える研究です。

 

 2024年能登半島地震で隆起した若山川の変動をSARピクセルオフセットで解析しました。結果は、若山川の南側の山地斜面で北向きの変動があることが分かり、現地で変動を確認しました。ただし、ノイズによって変動と紛らわしい変位が出ます。

 課題としては、ノイズを低減すること、数十cmの誤差が出ることです。ただし、大きな変動には有効と考えます。

 

<吉田一希氏>

 高解像度のDEM2024年能登半島地震の斜面変動を解析しました。

 

 国土地理院の高解像度DEMは全国の5割をカバーしています。

 2024年の能登半島地震の時、災害直後の調査のために被害の全体像を把握することを目的にDEMデータを使用しました。

 斜面崩壊としては、地すべり、表層崩壊、落石、土石流、クリープがあります。DEM解析は属人的です。判読を自動化するには教師データが必要です。データの公開数を増やすことが必要です。

 国土地理院では、都市域のオルソ画像の公開も始めます。

 

<向山 栄氏>

 数値地形画像解析で地表面の変位を計測しています。

 

 数値地形画像解析では机上で地形モデルができ、三次元計測が可能です。

 2007年の能登半島地震では航空レーザ計測で地表面変位を計測しました。水平変位は鉛直変位を乱すノイズとなります。

 2016年の熊本地震では布田川断層の東端の右ずれ断層を検出しました。

 2024年の能登半島地震の低角並進地すべりを検出しました。

 1911年に発生した稗田山(ひえだやま)崩れを長期にわたって観測しています。10年間の動きを検出しています。


 数値地形画像解析は計測手法として使えます。2011年の東北地方太平洋沖地震では、10cmの誤差で変位を検出しています。広域変動と局所的変位とその他の変位を分離可能です。地表の面的な変動を追跡できるので、地表踏査の事前準備として有効です。また、海底での変位検出も可能で、土層の流動や岩塊流でも使えます。

 課題としては、誤判定があること、データの品質が重要であること、不動域の判定方法、地質との関連などがあります。

 斜面変動発生の前と後の地形データがあれば、変位量と変位領域の広さを計測できます。変動速度の三次元表示ができ応力マッピングも可能です。これらは解釈が大事です。

 斜面災害では、現場で何が起こっているのか診断しコミュニケーションを取ること、そして、どんな社会を造るのかが大事です。

 

<総合討論>

 この後、原口氏の司会で活発な総合討論が行われました。

AIを使うことは当たり前で、AIを使っていのちを守ることが大事」(原口氏)というのが結論のようです。

 

<感想>

 AIは、必須の技術になっていることがよく分かりました。特に画像解析では手間を省き、解析時間を短くできる点で非常に有効と感じました。