本の紹介:日本列島では 原発も「地層処分」も 不可能という 地質学的根拠 ― 2019/09/06 17:54

土井和巳,日本列島では原発も「地層処分」も不可能という地質学的根拠.合同出版,2014年10月.
著者は,原子燃料公社などに30年余勤め,地下資源探査や原子力施設の基礎調査などに関わってきました.国際的な委員会の委員も経験しています.
この本を方経過は次のとおりです.
2019年8月24日(土)と25日(日)に東京の芝学園で開かれた第73回地学団体研究会の『原発問題シンポジウム「科学的特性マップ」を考える』で,著者は「日本の自然と原子力発電」と題して特別講演を行いました.
1953年に当時の東京教育大学理学部地質鉱物学科を卒業していますから,88歳前後と思いますが,しっかりと50分講演してくれました.
会場で,この本を販売していたので買ってきました.
この本の目次は次のとおりです.
はしがきにかえて
第1章 核分裂の発見と原子力の利用
第2章 放射性廃棄物の定義
第3章 放射性廃棄物の処理と処分
第4章 日本列島と放射性廃棄物処分の課題
第5章 放射性廃棄物管理と原子力開発の今後
第6章 原子力発電、これからどうすべきか
用語解説
あとがきにかえて
著者は,日本には放射性廃棄物を地層処分できる場所はないという意見です.日本列島は変動帯であり,北欧や米国のような安定した地殻は存在しないからです.
第2章で,放射性廃棄物の定義に触れていますが,国際的にも日本国内でも定量的な定義はありません.
「原子炉等規制法」では,「放射性物質を取扱っている施設で発生した廃棄物のすべてを放射性廃棄物の可能性を持つもの」としていて,放射性核種の定量的な数字は示されていません.
放射性廃棄物は,三つのグループに分けられます.
(1)放射性腐食生成物(CP: corrosion products')
正常な原子炉の運転に伴って生成する放射性廃棄物で,冷却水に含まれる不純物や錆などが放射性核種になったものです.コバルト60,セシウム137,マンガン54,ストロンチウム90などです.
(2)核分裂生成物(FP: fission products')
使用済み核燃料の中の核分裂によって生成された天然に存在する元素の放射性同位元素のことです.
使用済み核燃料は再処理を前提としなければ,そのまま高レベル放射性廃棄物です.この中には核分裂生成物と超ウラン元素╱核種(TRU 核種) があります.
セリウム144,ストロンチウム90,ジルコニウム95,ニオブ95,ルテニウム95,セシウム135などです.
(3)超ウラン元素╱核種(TRU: trans-uranium nuclides')
核分裂によって新たに人工的に大量に発生した原子番号93以上の元素のことで,原子番号93のネプツニウム,原子番号94のプルトニウムなどです.放射線としてガンマ線だけでなくアルファ線を放出します.アルファ線を放出する物質の多くが長寿命であるという特徴を持っています.
図1 放射性廃棄物分類の概念
(同書38ページによる)
日本では,「地層処分」の対象としている「高レベル放射性廃棄物」というのは,図1の高レベル放射性廃棄物の内の使用済み燃料を溶解して再処理した際の廃液だけを言っています.したがって,それ以外は「低レベル放射性廃棄物」としています.
ただし,NUMOの「包括的技術報告書(レビュー版)の概要」(2018年11月)では,TRU 等廃棄物(地層処分相当低レベル放射性廃棄物)も高レベル放射性廃棄物と同じ場所で地層処分するとしています.
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『地層処分に関する「科学的特性マップ」』なるものが,2017年7月に公表されました.この『科学的特性マップ』について,資源エネルギー庁の原子力発電環境整備機構(NUMO)が,各地で意見交換会を開いています.
このような時期に,「地層処分」について真剣に考える一つの材料となる本です.
なお,NUMO というのは,The Nuclear Waste Management Organization of Japan ですから,「核のゴミ管理機構」というのが正しい名前だと思います.
さらに付け加えると,著者の土井氏は,1980年に「わが国における放射性廃棄物隔離の地球科学上の問題」という論文を日本原子力学会誌に発表しています.この中には,現在問題となっている諸々の地質現象が含まれています.




