本の紹介:消された初期被曝 ― 2026/10/07 14:31

黒川眞一・(聞き手)白石 草(しらいし・はじめ)、徹底検証 消された初期被曝-----福島原発事故の線量評価は本当か。岩波ブックレット、2026年9月。
福島原発事故によって現在400人以上の人から小児甲状腺がんが見つかっています。しかし、政府は福島原発事故と小児甲状腺がんの因果関係を認めていません。福島で甲状腺がんが増えているのは、精度の高い超音波スクリーニング検査によって多数見つかっているだけだという主張もなされています。
その根拠の一つとして挙げられるのが、「原子放射線の影響に関する国連科学委員会」(UNSCEAR=アンスケア:United Nations Scientific Committee on the Effects of Atomic Radiation)が2021年に刊行した「UNSCEAR 2020/2021報告書」です。
このブックレットは、この報告書の決定的な欠陥を明らかにしたものです。数年間、考えに考えて黒川氏が到達した結論を述べている部分は圧巻です。
黒川氏の結論は、「UNSCEARが作り出したものはあまりにも支離滅裂です。砂上の楼閣ともいえない代物で、砂上のガラクタとでも言うべきものです。」
そして、この問題が大切なのは、原発が事故を起こした場合の避難計画に直接関わってくるためです。
専門用語が出てきて難しいところもありますが、ぜひ多くの人に読んで欲しい内容です。
「北大150年」を考える市民のつどい ― 2026/10/06 15:56
表記のつどいが2026年9月27日(日)午後1時半から、北大農学部総合研究棟多目的室で開かれました。会場はぎっしりの人で埋められました。オンライン配信は無く、会場のみでした。
明治政府は、北海道開拓のため1869(明治二)年、開拓使を設けました。開拓使は、現在の港区芝公園の増上寺に開拓使仮学校を開設しました。そして、1876(明治九)年8月14日に札幌農学校が開校します。この年から、今年が150年というわけです。
創基150周年を記念して9月26日と27日に記念式典・記念イベントが開かれました。
そんな中、「宮澤・レーン事件を考える会」などが主催して、市民のつどいが開かれました。
私は会場に、開始15分前位に着いたのですが、すでに満席で机付きの席には座れませんでした。なのでメモを取ることをあきらめて、ひたすら話に聞き入っていました。

「北大150年」を考える市民のつどい プログラム

つどいの様子

農学部への道

正門を入って右手にある「北海道大学施設案内図」(上)と「北海道大学所在地の先住民族に対する敬意の表明」銘板
最初に宮澤・レーン事件を考える会の唐渡興宣氏が開会の挨拶をしました。
アイヌの人々に対する謝罪は「ふるさと喪失」にたいする謝罪であると述べました。
小田博志氏は、札幌にはアイヌのコタンがありました、とまず述べました。北大の南西の端の石山通とJR函館本線に挟まれた場所に北大の農場がありました。この付近がコトニ・コタン跡とされています。現在は、北方生物圏フィールド科学センターがあります。
そして、アイヌ遺骨の盗掘です。北大の150年は北海道植民地化の150年でした。
小田氏たちは、「北海道大学 もう一つのキャンパスマップ」(寿郎社、2024年 第2版)を出しています。
プログラムにあるように、特別報告、テーマ別報告、フロア発言などがありました。
北大陸上部にちょっとのあいだ在籍していた佐々木 忠氏、地質教室の岡 孝雄氏などが報告や発言を行いました。
残念ながら、岡氏の話は聞くことができませんでした。別の用事が迫っていたためです。
なお、「北大と北大生の150年」(北海道大学150年史編集室編、北海道大学出版会、2026年3月)はネットで入手できます。
第51回札幌マラソンの10km ― 2026/10/05 17:34
2026年10月4日(日)札幌マラソンが行われました。
10kmに出ました。
ちょっと肌寒いくらいの気温で、晴れていて絶好の条件でした。10kmの参加者は約4,000人、ハーフは約8,000人とのことで、朝の地下鉄の真駒内駅から真駒内屋外リンクまでは人が歩道に溢れました。

写真1 地下鉄真駒内駅から会場に向かう人たち

写真2 紅葉が始まった真駒内公園
図1 10kmのコース図と高低図(TrailNoteによる)
地図の茶色が下り、綠が上りです。
ミュンヘン大橋の手前で左に曲がり右岸道路を上流に向かい、折り返して河川敷の遊歩道に降ります。そのまま河川敷遊歩道を下流に向かってから折り返し、ゴールに向かいます。5km手前からほぼ上りです。
ハーフマラソンは、南大橋の少し下流から河川敷遊歩道に降ります。
今回は、走ることに専念したくて写真を撮るのはやめました。ほぼ去年と同じ時間で走ることができました。走っている時は変な感覚で、もっと速く走れるのにと思うけれど足が動かないという状態でした。
この大会、10kmは制限時間が明示されていないようです。ハーフは、三越デパート前が10km関門で、スタートから80分です。このあと、豊平川右岸の遊歩道に出れば、交通規制の必要がなくなると思います。ある意味、誰でも参加できる大会です。
令和8年熊本地震・2ヶ月報告会 ― 2026/10/03 17:30
2026年9月29日(火)午後1時00分から同6時40分まで、防災学術連携体主催の標記報告会が開かれました。Zoomで視聴しました。
この報告会の様子は、防災学術連携体のホームページからYouTubeで視聴できます。また、当日のパワーポイントは、防災学術連携体のウェブサイトからダウンロードできます。
プログラムの概要は下のようでした。
4つのセッションで20の発表がありました。
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セッション1 「令和8年熊本地震について」
日本地震学会 日本活断層学会 日本地理学会 日本応用地質学会 日本第四紀学会
セッション2 「被害状況と対策についてI」
土木学会 地盤工学会 日本火災学会 農業農村工学会 日本建築学会
セッション3 「被害状況と対策についてII」
日本航空宇宙学会 日本リモートセンシング学会 廃棄物資源循環学会 農村計画学会 地域安全学会
セッション4 「避難・救援・支援活動について」
日本災害医学会 日本災害看護学会 空気調和・衛生工学会 日本自然災害学会日本安全教育学会
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興味をひいた報告を記します。
<和田 章氏:防災学術連携体代表理事;東京科学大学名誉教授>
趣旨説明
防災学術連携体は、学協会の垣根を外して交流を行っています。
例えば、耐震構造研究では理学と工学の面から明らかにする課題があります。工学は、その理屈が分かっていなくても進むという面があります。また、カタストロフィックな現象への対応も迫られます。
<松本 聡氏:九州大学>
日本地震学会「令和8年熊本地震後の日奈久断層帯における地震・DAS観測」
布田川(ふたがわ)断層では2016年の地震以来、広い範囲で地震活動が活発化していました。それから10年で隣接した日奈久(ひなぐ)断層で地震が発生しました。
光ファイバー・ケーブルによる地震波の観測を行いました(DAS観測)。30kmの観測線を使って5m間隔で観測を行いました。国交省がすでに敷設していた光ファイバー・ケーブルを使いました。2026年2月から8月までの観測で、断層周辺に後続波があることが分かりました。
<遠田晋次氏:東北大学災害科学国際研究所>
日本活断層学会「平成熊本地震から令和熊本地震:地殻活動と活断層研究」
阿蘇から続く日奈久断層は、「くの字」に曲がって布田川断層に続きます。平成地震(2016年熊本地震)では、2mの横ずれ断層でした。令和地震(2026年熊本地震)では、正断層が発生しています。
布田川断層でトレンチ調査を行ったところ、地震発生の平均間隔は2,000年で最も新しい前回の地震は2,000年前でした。
地震後も余効すべりによる変位が観測されています。断層直上に構造物があり、変位が見られるものがあります。
<熊原康博氏:広島大学>
日本地理学会「2026年熊本地震に伴う地表地震断層の地域的特徴」
地表地震断層の分布を把握し、148地点で変位量を計測しました。右横ずれで西落ちの断層が多いです。宇土半島の南の氷川町での水平変位が大きいです。
日本地理学会では、来年(2027)年夏に報告会を開く予定です。
<吾妻 崇氏:産業技術総合研究所>
日本第四紀学会「日奈久断層帯における古地震と地表地震断層(速報)」
今回発生した地表地震断層は、これまで考えられていた日奈久断層帯の断層線とずれているところがあります。氷川町付近が最も大きくずれています。
地震本部の2013年の再検討では、布田川断層帯と日奈久断層帯の二つの起震断層としていて、発生確率は30年確率で0〜6%としていました。2019年に九州大学が検討した結果は、同0.88%以下となっています。
<池内幸司氏:河川情報センター理事長、東京大学名誉教授>
今回の地震では家屋被害、道路被害などがありました。
九州自動車道の妙見第一橋では、約1.5mの段差が生じました。地震による地表断層の変位を考慮した対応が必要です。
妙見第一橋の北にある水無川橋梁では、46cmの沈下と36cmの水平移動が見られました。
球磨川では堤防が沈下しました。
水道施設が被害を受けたため広域で断水が発生しました。
二次災害としては、酷暑、大雨、在宅避難や車中泊による健康障害などがあります。
教訓としては、震央のすぐ近くにあった橋梁が地震に耐えた事例があり、対策次第では被害を減らすことができます。災害対応車両を事前に登録しておいて遅滞なく救援に行けるようにすることが有効です。海から医療機能を維持することも有効です。防衛省のPFI船舶「はくおうII」(大型フェリー)の利用は有効でした。
過去の教訓を使えるようにすることが必要です。構造物の地盤変位への対応、被害連鎖を止めること、地震後の雨や酷暑による複合災害に対応する体制を作ることなどが必要です。
<椋木(むくのき)俊文氏:熊本大学>
地盤工学会「令和8年熊本地震の地盤災害調査報告」
地盤災害についてです。
八代周辺では長周期振動が卓越し、氷川付近では短周期地震動でした。
宇城市豊野町では80cmの右ずれ、宇城市小川町の かるかや橋 では橋台と主桁間に70cmのズレが発生しました。
球磨川河口の堤防に変位が出ました。
液状化の発生箇所を空中写真で確認し現地調査しました。江戸時代から始まった八代市の干拓地(水を排除)では液状化が比較的少なく、埋め立て地(土砂を投入)に液状化が集中していました。
<感 想>
それぞれ方の発表時間は、質問と合わせて15分と短い報告会でした。それでも、いろいろな分野の話が聞けて非常に参考になりました。
それにしても、10年間に同じような規模の地震が起きるというのは、単純に地殻の歪みで説明できるのだろうかと疑問に思います。
防災学術連携体 速報会 2026年夏の気象災害 ― 2026/10/02 16:43
標記講演会が2026年9月18日(金)午後1時から同3時まで、ウェブで開かれました。副題は「猛暑と千葉豪雨による災害など」です。
プログラムは下のようです。
講演会の様子は、防災学術連携体のウェブサイトで見ることができます。YouTubeです(2026年10月2日確認)。
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☆趣旨説明 橋田俊彦(防災学術連携体幹事、横浜国立大学客員教授)
☆「2026年夏の記録的猛暑と千葉豪雨などの実態と要因」中村 尚(防 災学術連携体幹事、東京大学名誉教授、日本気象学会)
☆「猛暑による熱中症の状況と対策」横堀將司(日本医科大学教授、日 本救急医学会)
☆「2026年夏の水関連災害の状況と対策」池内幸司(防災学術連携体幹 事、東京大学名誉教授)
☆「令和8年8月千葉豪雨の洪水氾濫状況」二瓶泰雄(東京理科大学教 授、土木学会)
☆「千葉豪雨における多様な浸水形態とその要因-地形・道路・流域構造 に着目した現地調査-」大槻順朗(山梨大学准教授、土木学会)
☆全体意見交換
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<橋田俊彦氏>
防災学術連携体の幹事会では、2026年6月29日に<市民へのメッセージ 2026 「危険さを増す地球温暖化、夏秋の気象災害に備えましょう」>を出しました。
熊本地震、千葉豪雨、熱中症、水災害などさまざまな災害が起きています。気温40℃以上の酷暑日が続き、熊本では気温が高く降雨が少ない日が続きました。
千葉では気温は平年並みから低めで、日照時間が短くなっています。
<中村 尚氏>
1890年(明治二十三)年からの気温の変化を見ると、1980(昭和五十五)年から急激に上昇しています。1890年以降の平均では、10年で0.2℃の上昇ですが、1980年以降は10年で0.3℃上昇しています。年変動が大きくなっていて、これは自然変動によると考えられます。
自然変動は、偏西風の蛇行によりジェット気流の流路が変化することで起こります。長さ3,000〜6,000kmの周期の地球規模の非常に大きな大気・海洋の波動(ロスビー波:Rossby wave)により起きます。
2026年の夏の気温の高さは歴代5位でした。ただし、酷暑日が過去最多でした。これは亜熱帯ジェット気流が北に寄ったことが原因です。
イベント・アトリビューションによる解析では、人工的な影響による温暖化と自然寄与とを考慮することができます。2026年は17個の台風が発生しています。これは歴代3位の多さです。反時計回りの低気圧の大規模な循環(モンスーン・ジャイア)が関係しています。
<池内幸司氏>
2026年は8月13日〜14日に千葉豪雨、8月27日に北陸、青森、鹿児島で大雨が発生しました。8月8日から9日にかけての大雨で愛知県の庄内川で内水氾濫が発生しました。
千葉豪雨では総雨量は360mmで、時間雨量は115mmでした。重要なのは10分間雨量で10mmを越えると内水氾濫が起きます。ポンプ場が被災します。13名が死亡しました。注意する場所は、アンダーパス、坂の下などです。病院やマンションの地下が浸水します。下水管は53mm〜65mmの雨量を目標として整備しています。
<二瓶泰雄氏>
氾濫地形3要素がありますが、今回の水害では窪地、谷津、盛土が内水氾濫の要素となりました。
SAR画像で氾濫による浸水域を捉えることができます。それを見ると排水路が合流している場所、谷津地形の場所、上流での氾濫で起きる内水氾濫があります。
JR内房線の始発駅である蘇我駅は、東に谷津地形があります。台地に降った雨が集まりやすい地形になっています。
佐倉市の上志津では、ハザードマップの浸水想定区域外で内水氾濫が発生しました。道路を流れ下った水による氾濫です。
車は浸水深が1mほどになると走行ができなくなります。
<大槻順朗氏>
降雨による浸水は、地形、土地利用形態、降雨条件によって決まります。
谷津は細長い谷地形で昔は水田でしたが、今は耕作放棄地になっていたりします。砂州やその後背湿地も浸水しやすいです。
台地は住宅開発が進んでいます。
市川市の真間川では外水氾濫が起き、産業道路(県道283号)が川になりました。
市原市の村田川も外水氾濫です。谷津地形の所で想定以上の水位となり、調整池に水が入りませんでした。道路を水が流れました。
佐倉市の鹿島川は印旛沼に注ぐ川です。谷津全体が浸水し、横断道路が堰となって水を貯めました。
氾濫に対して地形の影響が大きいか雨量の影響が大きいかといえば雨量の影響が大きいです。
ただし、いろいろな浸水形態があり降雨状況だけ考慮してもダメで、地形条件を考慮する必要があります。
<感 想>
私の育った横浜北部にも谷津地形はありました。台地を削った細い沢で、最上流で湧水していることもあります。小さな沢は水田にもできないので、結構きれいな水が流れていたりします。もともと、水の流れる場所だったので、宅地となっても水は溜まりやすい場所です。
地形は昔のことを覚えているというのを実感したのは、1986年の大雨で宮城県北東部にある品井沼が氾濫したときでした。南北に流れる鳴瀬川の西に広がる広大な水田地帯で、この時の洪水で沼が復活したのです。
札幌でいえばJR桑園駅の南側が1m未満の浸水が予想されています。
車は、たぶん水深が50cmくらい(膝くらい)になると浮き上がって動けなくなる可能性が高いです。アンダーパスが要注意です。
