生命の星・地球博物館から石垣山へ2018/11/08 13:15

箱根の入口,小田原市入生田(いりゅうだ)にある県立・生命の星・地球博物館へ行って恐竜の骨を見学した後,早川を渡ってアスファルト道を登って石垣山へ行きました.途中から山道になり,再び舗装道路をしばらく歩くと石垣山です.ヨロイヅカファームマルシェでアイスクリームを食べ,帰りは JR 東海道線の早川駅に降りてきました.

「箱根ジオパーク ガイド1」は,このコースの案内です.地球博物館から石垣山までと JR 早川駅までは,それぞれ2.5km です.さすがに下りは早く歩けます.


箱根外輪山の溶岩や火砕岩類の東端が早川河口付近です.石垣山は,この外輪山溶岩の安山岩です.石垣山のある尾根は北東-南西方向に延びています.その北西斜面は急傾斜であるのに対し,南東斜面は緩やかになっていてミカン畑が広がっています.


江戸城の石垣用の大石が,この山から切り出されました.

それと何と言っても,秀吉が小田原攻めの時に,この石垣山に城を築いたことが有名です.城の建設には80日かかったのですが,城が完成した時に周りの木を切って1日で城が出来たように見せたので一夜城と呼ばれています.ここから小田原城までは直線距離で3km ほどです.



地球博物館から石垣山へ

図1 地球博物館から早川駅までのコース

ほとんどが舗装道路で,ダンプカーが頻繁に通ります.歩道が整備されているので危険はありません.へピンカーブを過ぎたところから旧道がしばらく続き,箱根ターンパイクと交差する手前で再び舗装道路に出ます.石垣山の向かいにヨロイズカファームマルシェがあります.

石垣山から早川駅への下りは,途中からほとんど車の通らない舗装道路となり,転げるように下っていけます.(Trailnoteで作成.赤が登り,青が下りです.)


地球博物館

写真1 地球博物館のティラノサウルスの骨格標本

大きな広間に恐竜,翼竜,マンモスなどが展示されています.今回の主な目的はこれでした,


放棄された大石

写真2 石垣山への途中にある大石

石垣用に切り出されたものの運び出されずに放置された安山岩です.節理の間隔が広いことが分かります.


ハリガネムシ

写真3 ハリガネムシ

屋根の雨を貯める小さな水槽の中にいました.ハリガネムシを見るのは70年ぶりくらいです.昔は水田の用水路に普通にいました.


階段

写真4 旧道への階段

ヘアピンの手前から旧道を歩くことが出来ます.いきなり階段になります.


石垣用大石

写真5 刻印・銘文のある石垣用石材

説明版に色々書いてありますが,良く分からなかったです.この左手下に「早川石丁場群」の一つがあります.


石垣山

写真6 石垣山

建物はヨロイヅカファームマルシェで,その向こうの森が石垣山の頂上です.


早川駅へ

写真7 早川駅への下り道

コンクリート舗装の急な坂が,ずっと続きます.通る人や車が少ないのでクモが至る所に巣を張っています.周りは全てミカン畑で,道路にミカンや夏ミカンが転がっています.



石狩川河口の右岸2018/10/15 10:58

石狩川は曲がりくねりながら石狩湾に注いでいます.明治以来の捷水路(ショートカット)工事で大分短くなりましたが,それでも日本で3番目に長い川です.


石狩川河口左岸は,石狩灯台やハマナスの丘公園などがあり多くの人が訪れます.それに比べると右岸は特別な施設などもなく,訪れる人は少ないです.石狩が右岸にある八幡の街の先は人家は少なくなります.聚富川(しっぷ・がわ)や知津狩川(しらつかり・がわ)が流れ込んでいて,砂丘の背後には湿地があります.


空から石狩川河口

写真0 空から見た石狩川河口(2006年4月撮影)

画面の上で,左から右に延び海に注いでいるのが石狩川です.石狩川右岸は水田が広がっていました.


知津狩川河口

写真1 新知津狩川河口付近の風景

知津狩川は当別北西山地を源流とする川です.途中,貯水池に水を溜めながら増毛に向かう国道231号と交差する付近で捷水路により石狩川に注いでいます.

この水路は知津狩川の捷水路で.向こうに見えるのが石狩川です.


ハマナス

写真2 ハマナスとその実

この時期でもハマナスが咲いていました.上の赤いのはハマナスの実です.


知津狩川河口

写真3 知津狩川河口

知津狩川が石狩川に注ぐところです.向こうに石狩新港のタンクが見え,その向こうは札幌西部山地です.この時,西の方はすでに雨でした.


石狩川河口右岸

写真4 石狩川河口

どこまでが川で,どこからが海か分かりません.茫洋とした風景が広がります.遠くに浜益の山々が見えます.


石狩灯台

写真5 石狩灯台と小樽赤岩

赤白の石狩灯台の右に見えるのが小樽赤岩です.ここから見ると小樽赤岩の海側が急斜面で陸側がなだらかな斜面になっているのが良く分かります.中央やや左の三角の山頂は塩谷丸山です.



大雪山系 旭岳2018/09/16 22:02

2018年9月15日,旭岳の姿見の池周辺と裾合平の途中までを歩いてきました.

去年の同じ頃,旭岳に登った時には見事な紅葉でしたので,それを期待していきました.チングルマの草紅葉はそれなりに見応えがありましたが,ナナカマドの葉が枯れてしまっていて,ちょっと寂しい秋の景色でした.


旭岳

写真1 姿見の池に向かう途中から見た旭岳

朝8時半頃です.この日は,ロープウェイの姿見駅から反時計回りに姿見の池へ行きました.天気は良く気温は暑いくらいで,風もほとんどありません.


チングルマ

写真2 チングルマの草紅葉と綿毛

姿見の池へ行く途中のチングルマの群落です.綿毛が朝日に光っています.



旭岳と姿見の池

写真3 旭岳

旭岳と姿見の池です.向かって左側の尖った小さな峰の方が高く見えますが,右のなだらかな尾根が標高2,291m の山頂です.山頂直下の壁を作っているのは,9千年前に噴出した裾合平火砕岩・溶岩で,火砕岩と溶岩が互層しているので縞々が見えます.西に開けた地獄谷は2,000年~3,000年前の爆発で出来たもので,この時に山体崩壊し岩屑なだれが発生しました.現地の説明版と最近の研究成果では異なっています.


構造土

写真4 階段状の構造土

向こう側の草の付いた斜面に階段状の地形が見えます.斜面の土砂が凍結融解を繰り返し受けると,重い石が石垣のように集まって斜面上方の細かい土砂をせき止め階段状の地形を作ると説明されています.階状土と言います.姿見の池から夫婦沼へ行く途中で見ることが出来ます.


シマリス

写真5 シマリス現る


旭岳西面

写真6 鏡池

夫婦池の北側の池です.ここでも水面に映った旭岳を見ることが出来ます.


旭岳西斜面

写真7 旭岳の西面

裾合平火砕岩・溶岩の縞模様が,はっきりと見えます.左手の崖錐斜面の中に突き出している尖った峰は東西性の岩脈です.


旭平溶岩

写真8 旭平溶岩

夫婦池から裾合平に向かう登山道を遮るように尾根をつくっている溶岩です.


旭岳北西斜面

写真9 旭岳北西斜面

裾合平火砕岩・溶岩で覆われた斜面です.頂上付近には盤ノ沢火砕岩・溶岩が分布しています.


地獄谷火山砕屑物

写真10 地獄谷火山砕屑物

鏡池のすぐ北を流れるピウケナイ第三沢(忠別川支流・ピウケナイ沢のさらに支流)の両岸に分布する火山砕屑物です.変質した安山岩など色々な礫を含んでいます.


ハイマツと草紅葉

写真11 旭岳とハイマツと草紅葉


ナナカマド

写真12 葉が枯れてしまったナナカマド

多くのナナカマドは,葉が枯れて黄褐色になっていました.例年のような見事な紅葉は見られませんでした.



積丹半島の神威岬2018/09/02 14:14

北西に向かって日本海に突き出た積丹半島の南西側の岬が神威岬で,先端に神威岬灯台があります.さらに,その沖に神威岩,メノコ岩が,雁行状(ミの字型)に海面から顔を出しています.


国道229号から神威岬灯台への町道を上っていくと広い駐車場があり,岬先端へ遊歩道がついています.海面から50m ほどの高さの 空中回廊といった感じです.


この岬の土台をつくっている地質は,中新世・余別層の石英含有黒雲母角閃石安山岩で,その上に鮮新世・野塚層の砂岩・礫岩・火山円礫岩および輝石安山岩が載っています.

実際に神威岬で見ることの出来る地質は,灰赤褐色のハイアロクラスタイトとそれに挟まれている黄褐色のシルト岩,そして灯台手前にある層状・半固結のシルト岩・砂岩・礫岩です.


昔は灯台には灯台守が常駐していました.その人たちは,海岸伝いで灯台へ行き来していました.そのために掘られたのが「念仏トンネル」です.

国道229号の余別トンネルから少し西に行った所に「食堂うしお」があります.ここから海岸伝いに灯台へ行く道がありました.その途中に念仏トンネルがあります.灯台職員の家族が,天長節(11月3日)のお祝いの買い物に行く途中で波にさらわれたのを機に掘られたと言われています.地理院地図にも道とトンネルが載っています.


このトンネルは海際ですので,岬の土台をなしているハイアロクラスタイトに掘られています.現在,神威岬灯台へ行く遊歩道の途中に念仏トンネルが見える場所の案内板があります.


もう一つ,神威岬から西を見ると沼前(のなまい)地すべりを見ることが出来ます.幅1,000m,奥行き900m,滑落崖の高さは200m 以上あります.末端は海の中なので,それを含めると奥行きはもっと長くなります.

地すべりの基盤岩は,陸側に傾斜した中新世の泥岩・緑色凝灰岩で,滑落崖にはハイアロクラスタイトを含む火砕岩類が露出しています.いわゆるキャップロック型の地すべりです.


沼前は明治初期に青森から移住した人たちが住んでいましたが,1965(昭和40)年頃から家屋の傾動や地割れが発生し,1970(昭和45)年に退去命令が出されて住民全員が退去しました.


神威岬全景

写真1 積丹岬から見た神威岬

岬先端の神威岩,メノコ岩が見えます.


ハイアロクラスタイト

写真2 「食堂うしお」の先から見た神威岬

国道229号が大きく南に曲がる海側にある「食堂うしお」の先に,灯台へ行く旧道跡があります.手前のコンクリートは階段の残骸です.念仏トンネルの東側坑口は,多分,手前左の大きな岩に隠されていると思います.この辺りの地質は,灰色を帯びた赤褐色のハイアロクラスタイトです.


ハイアロクラスタイト

写真3 ハイアロクラスタイト

赤褐色を帯びたハイアロクラスタイトです.安山岩のブロックも基質も全く同じ岩質です.


溶岩

写真4 安山岩溶岩

手前の海食台に出ているのはハイアロクラスタイトの顔つきですが,全体を見ると塊状溶岩の下底部(クリンカー)のようです.


神威岬

写真5 神威岬

灯台,神威岩,メノコ岩です.灯台右側の三角の露頭は,半固結のシルト岩,砂岩,礫岩の互層です.岬と二つの岩は火砕岩類で出来ています.


沼前地すべり

写真6 沼前地すべり

大規模な地すべりです.全体としては背後の滑落崖からストンと落ちている感じで,安定しているように見えます.中央付近の低くなっているところが活発に移動したようです.道路の海側に押え盛土が見えます.

左手前は,鰊を食べ荒らした鯨を退治した大蛸が固まったとされる蛸岩です.現地の説明板では「蛸岩」,地理院地図では「たこ岩」となっています.


念仏トンネル

写真7 念仏トンネル西側坑口

この写真の右側,礫浜の向こうに見える小さな穴が,念仏トンネルです.このトンネルが出来る前は,左側の小さな岬を回って通っていたことになります.神威岬灯台に行く遊歩道から見えます.付近に案内板があります.岩は,写真3,写真4と同じです.


旧道

写真8 海岸から登ってくる道

中央やや左に白く見えるのは海岸から登ってくる階段です.「つづら折り」で斜面を登って右端の所で尾根に達します.念仏トンネルの坑口が見えます.


神威岩とメノコ岩

写真9 神威岩とメノコ岩

手前が神威岩で一番奥の三角の岩がメノコ岩です.海上に出ている岩が「ミの字」に並んでいます.この日は曇り空だったのと強い風が吹いた後だったので,積丹ブルーではありませんでした.


砂岩層

写真10 砂岩層

半固結の砂岩層に大きな亜円礫が散点している地層です.どういう環境で出来たのか不思議です.


岬の根元

写真11 灯台側から岬の根元を見る

尾根伝いに遊歩道が整備されています.手前の一番低い場所に念仏トンネルを通る昔の道路の降り口がありました.



積丹半島の幌武意海岸2018/08/28 18:39

久しぶりに積丹岬の幌武意(ほろむい)と神威岬に行ってきました.まず,幌武意海岸です.


2018年8月27日(月)でしたが,観光客で大賑わいでした.大きく様変わりしたという感じです.


東の幌武意町から西の入舸町(いりかちょう)まで,断崖の上を積丹岬自然遊歩道が整備されています.その途中に有名な幌武意海岸があります.唯一,積丹岬先端付近で北の海岸に降りていける場所です.


5万分の1地質図幅では次のようになっています.


積丹町美国(びくに)から積丹岬までの海岸沿いには,南から美国-湯内累層・上部集塊岩層,同凝灰質砂岩泥岩層,同中部集塊岩(未区分:尾根内層・火砕岩部層・石英含有角閃石安山岩質水冷破砕岩および同質火山円礫岩)が分布しています.これらの分布は,国道229号より海側で,内陸側は積丹岳などの古い火山の溶岩や更新世の火山山麓扇状地などが分布しています.幌武意海岸の崖には流紋岩岩床があります.


展望台から

写真1 展望台から

駐車場の上にあるトンネルを抜けた展望台から見た島武意海岸です.海の中に岩脈群がそそり立っています.これらの岩脈は,石英を含んだ輝石安山岩で,角閃石はあまり目立ちません.黄鉄鉱が散点していますが,ほぼ新鮮です.


変質帯

写真2 展望台東の変質帯

展望台のすぐ東に見える変質帯です.原岩の節理が残っていますが完全に白色化しています.


変質岩

写真3 変質岩

海岸へ降りて行く遊歩道脇に見られる露頭です.原岩は,多分シルト岩でしょう.


遺構

写真4 遺構

遊歩道を降りた所に立派な石垣が残っています.何の遺構か不明です.中央に見える階段の左に,石に刻まれた銘板があります.「記念 大正六年五月 石工 中村○一郎」までは読めますが,肝心の「記念」の下に彫られている字が読めませんでした.銘板の左下にマムシが4匹休んでいました.この写真の反対側にも石垣が残っています.


節理

写真5 岩脈の節理

石英含有角閃石安山岩岩脈です.西に傾斜した柱状節理が発達しています.左側では方状節理になっています.


岩脈

写真6 岩脈の顔つき

斜長石・輝石・角閃石とも数 mm の大きさです。.


出岬

写真7 出岬(でさき:でみさき)の変質帯

海中に非変質の岩脈があり,海岸の崖は変質を受けています.原岩の節理などが残っています.出岬の灯台から東を見ると変質していない火砕岩類は陸側に10°ほどで傾斜しています.この付近全体が,一種のケスタ地形を呈しているようです.


粗粒玄武岩

写真8 粗粒玄武岩

遊歩道を降りて西(左)に行くと玉石を積んだ石垣の遺構があります.その背後斜面は粗粒玄武岩です.安山岩岩脈に比べると節理間隔は広く,灰黒色を呈しています.海岸にほぼ直交する方向(N10゚E)に貫入しているので,海岸の礫の間にも露頭があります.


無線方位信号所

写真9 積丹岬無線方位信号所

沖を通る船のレーダー画面に灯台や灯浮標などを表示させるための施設だそうです.積丹岬には,NTT など幾つかの電波塔が建っています.