令和6年 能登半島地震により発生した土砂災害の緊急調査報告会 ― 2024/03/12 13:01
令和6年 能登半島地震により発生した土砂災害の緊急調査報告会
(令和5年度 日本地すべり学会能登半島地震緊急調査報告会)
2024年3月7日(木)16時から18時まで、表記報告会が行われました。日本地すべり学会と砂防学会の共催でした。
Zoomで視聴しました。
プログラムは下のとおりです。
1.緊急調査の総括
砂防学会会長(調査団長) 大野宏之氏
2.先遣隊の緊急調査報告
信州大学教授 堤 大三氏
富山県立大学教授 古谷 元
3.地震による土砂災害の減災のための調査
北海道大学教授 山田 孝氏
4.能登半島地震の崩壊に関する地形解析(速報)
新潟大学教授 権田 豊氏
今回の報告会は、個々の地すべり、崩壊の紹介でした。箇条書きで概要を紹介します。
・地すべり移動土砂によって河川が閉塞されて湛水池ができた個所が結構あります。ただし、土砂ダムが決壊する危険性はあまりないようです。
・地すべり土砂が長距離を移動しています。土砂の流動性が大きいようです。
・地震発生時に積雪が多少あり、実効雨量は少しだけ大きくなっています。
・地すべりの全体ブロックが把握できない地すべりがあります。
・既存の法枠工が移動して破壊している箇所があります。
・崩壊が集中しているのは、新第三紀のデイサイト質火砕岩類の分布域で、次に多いのは泥岩分布域、次が砂岩・礫岩互層分布域です。デイサイト質火砕岩分布域での崩壊は、規模が大きい傾向にあります。
・崩壊が多い斜面の傾斜は、50°~55°です。
・活断層からの距離が15㎞付近まで崩壊が発生しています。一般的に言われている範囲より広いです。
・崩壊面積率は、活断層から3~4㎞と11~12㎞付近で大きくなる二つの山があります。
・崩壊に影響する因子としては、地質、傾斜、傾斜方向、活断層からの距離が効いているようです。
・今後、土砂の移動範囲、流動化の程度、生産土砂量、土砂移動距離などを明らかにする必要があります。
<感 想>
崩壊性地すべりというのは、概ね30 度未満の緩斜面で、降雨または地震によって突発的に発生し、土塊の大半が地すべり地から抜け出したものを言います。
層境界ですべり面が形成され地すべりとなる場合と地下水により流動化して土石流になり長距離移動する場合があります。この地すべりは三つの類型に分類されます。
1) 降下火砕堆積物/流れ盤(マントルベッディング)
2) 溶岩・火砕岩・大規模火砕流/流れ盤
3) 海成堆積岩/流れ盤
(以上、杉本ほか、2023による)
図 崩壊性地すべりの類型と推定される発生プロセスの一つ
(杉本宏之ほか、2023、文献調査に基づく崩壊性地すべりの類型化。令和5年度 砂防学会研究発表会概要集、187-188。)
今回の能登半島での斜面崩壊は、崩壊性地すべりに似た挙動を示しているようです。上の三つの類型の「火砕岩/流れ盤」に相当する場所で崩壊が多発しているようです。宝立山(ほうりゅうざん)付近には半島方向の背斜があり、その北の若山川に背斜があります。このような地質構造が崩壊の素因として大きく影響していると考えられます。
深層崩壊、周氷河斜面堆積物の崩壊、そして崩壊性地すべり、と集中的な降雨による土砂災害が増えています。地震による斜面崩壊も様々な形態があり、日本列島全体で斜面崩壊が活発になる時期になっているように感じます。
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