第7回 道総研オープンフォーラム2024/03/05 08:02

 2024年3月1日(金)午後2時から5時まで表記フィーラムが、かでる2・7アスビックホールとzoomで開催されました。テーマは「地域に応じたゼロカーボン技術を北海道のすみずみに」です。

 私はzoomで視聴しました。

 

 北大工学部の石井一英(かずえい)教授の基調講演「ゼロカーボン北海道に貢献できる再エネ等の地域資源の活用」、道総研の成果発表、総合討論、ポスターセッションと展示が行われました。

 

 プログラムと講演資料(pdf)は、3月8日(金)まで道総研のウェブサイトで公開されています。

 

 以下、概要を記します。

 

石井一英氏:ゼロカーボン北海道に貢献できる再エネ等の地域資源の活用

 石井氏は土壌地下水汚染、廃棄物や生ごみを資源として活用する研究を行っていました。ものとエネルギーの循環について研究しています。

 

 世界の人口は、2050年には100億人に達すると予測されています。アフリカの人口増加が大きいです。食料需要が増大し肥料としての窒素が必要になります。畜産物の生産が追い付かなければタンパク質クライシスが発生します。海洋養殖が増大します。

 

 二酸化炭素を絶対量として何トン削減できるかが問題です。

 最終エネルギー消費は、暖房・給湯などの熱が約50%、運輸関係が約30%、発電は約20%で熱と運輸が問題です。

 温室効果ガスの排出量測定と見える化、エネルギー診断と省エネルギー対策、設備更新時の効率的な機器の選択、重油から天然ガスへの転換など、実証実験を行いながら少しずつ進めていくことが大事です。身近なところでは、車はコンパクトカーやハイブリッドカーに、住居の構造強化による断熱効果の増大などがあります。

 

 再生可能エネルギー源としては、風力、太陽光、木質バイオマスがあります。今後、洋上風力発電が有力です。

 水素については、鹿追町でバイオマスのガスから水素を抽出する試みが行われています。室蘭や苫小牧でも水素利用が検討されています。

 木質バイオマスは国内林からの供給が平取町で行われています。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では、農業残渣を燃やすバイオマスバーナーを開発しています。

 

 2021年度の実績で温室効果ガスに対する廃棄物の割合は約3%で、そのうち温室効果ガス削減に貢献できるのは1/3です。

 

 今後は食料生産が鍵になります。そのためには地産地消、地域の連携、エネルギー・食・価値の循環を多くの人を巻き込んで行うことが大事で、ビジョンつくりが重要です。「やりたいこと」だけでなく「やらなければならないこと」にも取り組む必要があります。

 

 歴史的には、自然的循環の中で生活していたのが人為的循環を作り出して生活するようになりました。再びエネルギーを自然から取り出す時代になっています。

 北海道の179自治体の地域ニーズに見合ったエネルギーの生産が必要です。

 さらに、自然を回復させるネイチャーポジティブの視点を持ってゼロカーボンを実現し、循環型経済(サーキュラーエコノミー)を実現ことです。

 

北口敏弘氏(エネルギー・環境・地質研究所):地域特性に応じたエネルギー地産地消モデル構築~戦略研究の成果の概要~

 北海道立総合研究機構(道総研)は、農業、水産、森林、エネルギー・環境・地質、建築の研究所などが集合した組織です。道総研の戦略研究の一つが省エネルギー(省エネ)で、地中熱のような再生可能エネルギーの利用、温泉熱やメタンガスなどの未利用資源の活用を目指しています。

 省エネルギー対応としては、津別町や鷹栖町で街区内の省エネを支援しています。再生可能エネルギーの利用としては当別町の木質バイオマスや地中熱の利用、足寄町での温泉熱などの利用があります。

 

堤 拓哉氏(建築研究本部):脱炭素のまちづくり~公共施設の省エネとエネルギー融通の効果~

 津別町は約6万ヘクタールの森林があります。この森林資源を木質バイオマスとして利用することにしました。

 中心市街地にある公共施設の更新時に省エネ対策を施し、熱資源の運用改善と街区内の熱融通を行いました。運用時のエネルギーを減らすなど役場庁舎の運用改善、エネルギー消費の実態調査、木質バイオマス・ボイラーの使用比率の増大などを行い、木質:灯油の比率を82としました。温水循環ポンプの電力削減、ボイラーの運転時間の削減で41%の電力消費量削減などを実現しました。

 街区の二酸化炭素削減では医療施設のゼロエミッション化(ZEB化)、住宅更新時に50%をZEB化するなど、様々な方法を組み合わせて削減対策を行いました。

 また、既存の木質ボイラーからの熱の融通や施設の省エネルギー化を進めています。

 

白土博康氏(エネルギー・環境・地質研究所):地域特性に応じたエネルギー地産地消モデルの構築~当別町における木質バイオマス・地下水熱利用の取り組み~

 当別町の人口は1.5万人です。融雪システムを設置しています。

 エネルギービジョンの中で太陽光発電と木質ペレット・ボイラーによる再生可能エネルギーの利用を進めています。木質ペレットは森林資源の地産地消になります。地中熱利用は太美地区の地下水の温度が高いことを利用すれば、ボーリング費用を低減できると考えました。

 木質ペレットの生産のため衛星画像を用いてAIで樹種の分類を行った結果、98%正しく認識できることが分かりました。これをもとに試算すると7,000立方メートルの樹木伐採で均衡が取れるとの結果となりました。

 伐り出した丸太は空気の通りが良くなるように井桁に組み、雨にあたらないようにブルーシートをかけることで、3カ月で水分を50%から25%することができました。この木材で木チップを生産し、木チップボイラーでお湯をつくり蓄熱槽にためパネルヒーターで暖房しました。重油ボイラーと併用しています。

 地下水熱は土壌熱と地下水熱の両方を利用するヒートクラスター方式を採用しました。JR札沼線(学園都市線)のロイズタウン駅近くで電気探査を行い試験井戸で確認したところ、深度40m100mのところに水温40℃の地下水があることが分かりました。

 効率良くエネルギーの地産地消が実現できました。

 

鈴木隆広氏(エネルギー・環境・地質研究所):温泉熱と温泉付随ガスのハイブリッド利用モデルの提案~足寄町イチゴ栽培ハウスでの事例~

 足寄町は8割が森林あるいは丘陵で、主要産業は酪農です。

 足寄町の国道241号沿いに「ケアハウス銀河の里あしょろ」と「足寄ぬくもり農園」があります。ケアハウスには銀河の湯の泉源があり、ぬくもり農園には新町1号井があります。ぬくもり農園では温室15棟で通年のイチゴ栽培を行っています。

 ケアハウスの泉源は常時自噴し付随するガスで発電して、ぬくもり農園の断熱効果の良い新棟に送っています。しかし、発電の定格運転ができない、熱交換器は利用していなくてお湯を捨てているといった問題がありました。

 ぬくもり農園の泉源は未利用温泉水がタンクから溢水している、温室の断熱性能が悪く灯油ボイラーで補填しているといった問題がありました。

 そこで、ガス発電機の定格運転ができるガスの確保、温泉熱の確保、温室の断熱性能の把握を行うことにしました。

 ガス発電についてはケアハウスの泉源とぬくもり農園の泉源のガスを混合することで定格運転ができる見通しが立ちました。

 温室の床暖房に温泉水を毎分10リットル追加することで灯油使用料が約100リットル削減できました。

 利用しないで大気中に放散していた温室効果ガスで発電することによって年間約530トンの温室効果ガスを削減できると推定されました。

 

 この後、総合討論が行われ、津別町、当別町、足寄町の方がそれぞれ発言しました。

 

<感 想>

 派手さはないですが、それぞれの自治体で身の丈に合った再生可能エネルギーの利用が進んでいることがよくわかりました。

 基調講演をした石井氏が指摘するように、今の時代は技術の進歩によって循環している自然エネルギーを効率よく利用する時代に入ったとおもいます。石炭・石油の時代は終わり、夢の原子力の時代も終わりを迎えようとしています。

 地球上で人類が生存し続けるためには、自然エネルギーを効率よく使う技術、エネルギーを無駄にしない技術をさらに開発することが重要です。文明の転換点に差し掛かっているように感じます。