アスベスト被害 ― 2020/12/16 16:04
以前アスベスト(石綿)について書いたことがあります。
( http://mishi.weblike.jp/asbestos.htmlおよび
http://mishi.weblike.jp/asbestos_rubble.html)
今回、全日本民医連が発行している雑誌「いつでも元気」の2020年12月号(6ページ〜8ページ)に九州社会医学研究所 所長の田村昭彦氏が「今後も続くアスベスト被害 建築物解体のピークは2028年」という記事を書いています。その概要を紹介します。
15年前、株式会社クボタ旧神崎工場周辺で中皮腫患者が多発して問題となりました。中皮腫は、ほとんどがアスベスト(石綿)を吸い込んだことによるもので致死率の高い癌です。アスベストによる健康被害は、アスベストを吸い込んだらすぐに発症するわけではなく、約40年後に発症するという特徴があります。
図1に示すように、中皮腫による死亡者は1990年代前半から急激に増えていて、2018年現在も減少する気配はありません(黄色の折れ線グラフ)。
図1 日本のアスベスト輸入量と中皮腫死亡者数の推移 財務省貿易統計と厚生労働省人口動態統計より(田村、2020) |
アスベストの8割(約800万トン)が建築材料として使われてきていて、これから耐用年数がきたアスベストを含む建築物の解体が増えます。図2の2008(平成20)年までは実績でそれ以後は推計値ですが、解体のピークは今から8年後の2028(令和10)年です。
図2 民間建築物の年度別解体棟数(推計) 国土交通省;社会資本整備審議会建築分科会 アスベスト対策部会(第5回)資料に加筆 |
建物の解体作業に当たる作業者だけでなく、周辺住民にアスベスト被害が広がることが懸念されます。
アスベストは飛散のしやすさ、発じん(塵)性によって三つのレベルに分けられています(表1参照)。
アスベストによる健康被害は決して終わった問題ではなく、これから30年近く続きます。
建物の解体作業時には、まずアスベストがあるかどうかを測定してアスベストが検出されたら防じんマスクをして作業し、チリが飛散しないように水を撒くなどすることが必要でしょう。
アスベストが1%以上含まれているかどうかを10秒程度で測定できる携帯型アスベスト・アナライザーという機器があるそうです(例えば,microPHAZIR-AS)。