本の紹介:学校をブラックから解放する ― 2018/10/11 17:03
教職員の働き方改革推進プロジェクト編,学校をブラックから解放する 教員の長時間労働の解消とワーク・ライフ・バランスの実現.2018年10月,学事出版.
オンラインの change.org を通じて「教職員の時間外労働にも上限規制を設けて下さい!!」の署名を展開している「教員の働き方改革推進プロジェクト」のメンバーが執筆した本です.
はじめに
第1章 教員の多忙化解消に向けた学校の働き方改革
第2章 学校の業務改善にはどれほどの効果があるか
これまでの取り組みと「中間まとめ」以降の課題を検証する
第3章 部活動の過重負担:職員室を二分する意識に着目して
第4章 過労死と公務災害認定
第5章 変形労働時間制の問題点と調整休暇制度の導入の必要性
資料
からなっています.
この本では,「国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(給特法)の問題,「学校における働き方改革」の問題,部活動の問題など,色々な問題について書かれています.
ここでは,強い印象を受けた点について述べます.
<過労死の問題>
第4章は,教員の夫を過労死で亡くした工藤祥子氏が執筆しています.
公務災害認定(教師の労災認定)を得るのにどれだけの努力が必要かが良く分かります.勤めていた学校の教師たちの協力が無くては,公務災害認定を受けるのは非常に難しいことが分かります.
<変形労働時間制の問題>
第5章では,変形労働時間制ではなく調整休暇制度の導入が必要だと説いています.
調整級化制度は,労働基準法に基づく時間外手当を支給することを原則とし,法定労働時間を越えた分を代替休暇に振り替えるというものです.
1年間の変形労働時間制での時間外労働の限度は,1週間15時間,1ヶ月45時間,1年360時間です(平成10年労働省告示 第154号).
教職員の過労死の実態は,ほとんど分かっていないと言います.今のままのブラックな学校運営を続けていけば,優秀な人材が集まらなくなるでしょう.
そして,より重要なことは教育予算を増やして教職員を増やし,教育に専念出来るよう多すぎる業務を減らすことだと思います.
今,中央教育審議会の部会で検討されている1年単位の変形労働時間制というのは,めちゃくちゃな制度です.この制度は,どう考えても残業代を減らすための制度で,労働時間を減らす制度ではありません.
人間は半年寝ないで仕事して半年寝るというサイクルでは,当たり前ですが絶対に生きていけません.1日単位のサイクルで生きているのです.変形労働制の非人間性は明らかです.