地すべり学会北海道支部 現地検討会 ― 2018/07/03 12:25
2018年6月29日(金)に行われた現地検討会は,小樽と余市を結ぶ高速道路のり面の地すべりでした.
北海道横断自動車道の余市インターチェンジから小樽ジャンクション間の工事が進行していて,平成30(2018)年度中には開通になる予定だそうです.
今回見学したのは,忍路地区と朝里地区です.
忍路地区は,忍路半島の南,船取山の麓で工事中に発生した のり面崩壊と背後の地すべり対策としてソイルセメントによる押え盛土を行い,その盛土の中をトンネルで通過する方法をとった現場です.
もう一つの朝里地区は,高速道路の朝里川温泉橋と第二天神トンネルの間の地すべり対策です.第二天神トンネルは,毛無山の北東斜面の下を通過する延長2,872m の トンネルです.
図1 忍路地区(TrailNoteで作成)
図2 朝里地区(同上)
<忍路地区>
写真1 忍路地区の押え盛土に掘削したトンネル
亀裂の入ったのり面の範囲に押え盛土をし,盛土にトンネルを掘りました.山側に集水井を施工しました.
写真2 押え盛土と地すべりの全体
右の尾根が船取山で,その麓の緩斜面が地すべりです.すべりの方向は右向こうから左手前です.
写真3 基盤岩のハイアロクラスタイト
忍路半島と同じ典型的なハイアロクラスタイトです.押え盛土の余市側切土のり面です.
写真4 地すべり移動体と同じ地質
右に見えるのが押え盛土とトンネルの一部です.のり面に出ているのは粘性土を主体とする崩積土です.現地検討会資料では「岩屑堆積物」としています.トンネルの小樽側の のり面です.
<朝里地区>
写真5 朝里地区の地すべり対策工
地すべり末端の切土量を少なくして集水井,抑止杭を施工しました.
写真6 朝里川温泉橋と地すべり現場
朝里川を跨ぐ橋とその向こうの地すべり現場です.橋の向こうに見える三角の山体の麓の緩斜面が地すべりです.正面遠くは毛無山です.
写真7 地すべり末端の抑止杭
緩斜面全体の地すべりブロックのほかに,その末端の小規模な地すべりについても抑止杭などで対策を行いました.Φ400mmの杭です.小樽側の沢に向かって滑っている地すべりブロックです.
写真8 緩斜面の地すべりに設置された集水井
本体地すべり対策の集水井で,本線より山側に5基設けました. 緩斜面の地すべり移動体は,基盤岩である砂岩・礫岩層の上面をすべり面とし,十万坪砂礫層の上に乗り上げています.十万坪砂礫層というのは,国道5号沿いの山麓に分布している砂礫層で,銭函川左岸に「十万坪」という地名がありました.今の小樽市桂岡町です.
写真9 十万坪砂礫層に乗り上げた地すべり移動体のコア
緑の部分が十万坪砂礫層,黄色は地すべりの移動によってせん断を受けた部分,赤の部分は孔内傾斜計で変位が観測された区間です.
このコアは,一度乾燥したため硬そうに見えますが,非常に脆弱だったそうです.ボーリング技術の高さが分かります.
今回の現地検討会は,見やすい資料が用意されていて大変参考になりました.
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