地球の水 ― 2018/06/03 11:13
日本地球惑星科学連合ニュースレターの2018年3月号に,唐戸俊一郎氏が「地球の水:分布,循環,起源」を書いています.
唐戸氏は,「参考にした図書など」で*印で示した本を著しています.
地球表面には海がありますが,その水の量は地球質量の0.023%とごく少ないのです.その海の水は,地球上にある水の約97%を占めています.
地球の表面付近は,リソスフェアとアセノスフェアに分けられます.リソスフェアは,厚さ100kmほどで地殻とモホ面の下のマントル最上部に相当し,変形しにくい一体のものと見なされます.ただし,リソスフェアというのは,物理的な応答によって分けられたものなので,時間スケールの違いなどによって扱いが異なり,その厚さは数十 km から数百 km まで変化します.
リソスフェアの下には地震波速度が低下する領域があり,アセノスフェアと呼ばれます.アセノスフェアはリソスフェアに比べて流動しやすい性質を持っています.アセノスフェアの厚さは,100km~200km です.
アセノスフェアの下に遷移層があります.遷移層というのは,深度410km~670km にあり,密度が約3.5g/cm3(地震波速度 9km/sec)から約4.5g/cm3 (地震波速度 11km/sec) へと変化します.その原因は,マントルを構成する鉱物が,より密度の高い鉱物へ相転移するためです.
図1 地球マントルの構造と水の分布
地殻の直下付近では水の量は0.01%(100重量 ppm)程度ですが,遷移層では最大1%(10,000重量 ppm)と非常に多くなります.下部マントルの水の量は0.1%(1,000重量 ppm) 以下です.(唐戸,2018 の図に追記)
遷移層付近ではマントルが部分溶融してメルトが出来ますが,遷移層の上で出来たメルトは重く,下で出来たメルトは軽いのです.それで,水を含んで部分溶融したメルトは遷移層に集まってきます.このため,遷移層から上部マントルへ安定的に水が供給されると考えられています.
地球の水については,
1)水はどこから,いつ来たのか
2)現在,地球や地球型惑星にどれだけの水があり,どのように分布しているのか
3)地球を含む地球型惑星内部で,水はどのように循環しているのか
と言う問題があります.
水の量や分布,循環の形態は,ある程度分かってきています.地球の水の量は地球全質量の0.23%であり,特別な過程を考えなくても水の起源は説明できると考えられます.
参考にした図書など
☆唐戸俊一郎,2018,地球の水:分布,循環,起源.地球惑星科学連合ニュースレター,Vol.14,No.2,19-21.
( http://www2.jpgu.org/publication/jgl/JGL-Vol14-2.pdf )
*唐戸俊一郎,2017,地球はなぜ「水の惑星」なのか 水の「起源・分布・循環」から読み解く地球史.講談社ブルーバックス.
☆在田一則・竹下 徹・見延庄士郎・渡部重十 編著,2015,地球惑星科学入門 第2版.北海道大学出版会.
日高山脈の自然銅 ― 2018/06/09 12:02
日高山脈博物館の秘蔵品の一つに自然銅があります.人工物でないかどうかの鑑定は東北大学の北風 嵐氏が行い,自然銅であることがはっきりしています.
( http://www.hk-curators.jp/archives/1784 )
ずいぶん昔のことですが,日高山脈博物館で最初にこの自然銅の塊を見た時は,あまりに見事な銅の塊なので人工物ではないかと疑っていました.
2018年6月5日に,新ひだか町静内のペラリ山に登ってきました.5万分の1地質図幅「農屋」を見るとペラリ山の南西に Cu と Crと書かれています.蛇紋岩地域なのでクロム鉄鉱の鉱床があるのは分かりますが,銅鉱床があるというのは,どういうことかと疑問に思いました.
調べてみると,小林治夫「北海道日高國静内鑛山產自然銅の反射顯微鏡的研究」という論文が出ていました.
ペラリ山の東,捫別川の最上流に静内鑛山がありました.ここでは,クロム鉄鉱を採掘していましたが,その一部に「銅の澤」があり,自然銅の大きな塊が大量に発見されたそうです.最大のものは200kg 以上だったそうです.
5万分の1地質図幅説明書「農屋」では,200トンの銅の塊があったと記されていますが,これはちょっとあり得ない話です.銅の密度は8.98g/cm3ですから,200トンの塊となると球形としても直径3.5m の大きさになります.
200kg とすると直径35cmの球で収まります.これはあり得る話です.日高山脈博物館の自然銅の塊は,これよりは小さいようですが,昭和15(1930)年当時,10kg 程度以下の銅の塊(球形とすると直径15cm 程度) は続々と発見されていたそうです.
小林は,自然銅の生成過程を次のように推定しています.
1)蛇紋岩中には,まずクロム鉄鉱(FeCr2O4)が生成された.
2)その後,熱水の作用によって黄銅鉱(CuFeS2)脈が蛇紋岩の裂かに沈殿した.
3)さらに,熱水の作用により黄銅鉱から輝銅鉱(CuS2)・斑銅鉱(Cu5FeS4)固溶体が形成され,同時に磁鉄鉱が晶出した.
4)すでに出来ていた輝銅鉱が酸化されて自然銅が生成された.
つまり,熱水性鉱床として形成された輝銅鉱・斑銅鉱が酸化されて自然銅が形成されたとしています.
一般に,自然銅は色々な銅鉱床の二次酸化帯で産出し,表面は酸化によって赤銅鉱(せきどうこう:Cu2O)に覆われているそうです.
銅の鉱石は,主に熱水性鉱床に産出します.
マグマ活動では,銅は珪酸塩鉱物に嫌われてマグマの冷却の時に残液に濃集し,マグマ固結の最終段階でマグマから放出される熱水中へ移っていきます.この熱水によって形成されるのが熱水性鉱床です.
熱水性銅鉱床には,鉱脈鉱床,海底熱水鉱床,スカルン鉱床,斑岩銅鉱床があります.海底熱水鉱床は,キースラーガーと言われた含銅硫化鉄鉱床や黒鉱があります.斑岩銅鉱床の銅の起源はマントルであると考えられています.
熱水性鉱床のほかに銅を産出する鉱床としては,硫化物マグマ鉱床,カーボナタイトに伴う鉱床,ミシガンの自然銅鉱床,ヨーロッパの含銅頁岩,ザンビアとコンゴの国境付近にあるカッパーベルトの銅鉱床などがあります.
参考にした図書など
☆東 豊土,博物館秘蔵品の「価値」は いかようか? ~日高山脈博物館の「自然銅」~【コラムリレー第7回】
( http://www.hk-curators.jp/archives/1784 )
*自然銅の塊の写真が載っています.
☆小林治夫,1942,北海道日高國靜内鑛山產自然銅の反射顯微鏡的研究.地質學雑誌,第49巻(第589号),376-389.
*J-STAGE で見ることが出来ます.
☆島崎英彦,2016,鉱石の生い立ち.明文書房.
☆島崎英彦のホームページ>2)日々雑感 心に浮かぶこと
( http://www1.odn.ne.jp/~caw40120/comment.htm )
☆松下勝秀・鈴木 守,1962,5万分の1地質図幅及び説明書「農屋」.北海道開発庁.
*地質図Naviで5万分の1地質図幅を表示し,凡例の上にある「図幅説明書」で説明書を見ることが出来ます.
本の紹介:憲法カフェで語ろう 9条・自衛隊・加憲 ― 2018/06/11 11:29
あすわか(明日の自由を守る若手弁護士の会)+柳澤協二,憲法カフェで語ろう 9条・自衛隊・加憲 憲法カフェへようこそ2.かもがわ出版,2018年5月.
なかなか説得力のある内容です.
憲法9条をかみ砕いて書き直した文章,1947年に文部省がつくった「あたらしい憲法のはなし」の悲惨で無謀な戦争への深い反省を示した戦争放棄の文章はわかりやすいです.
9条に自衛隊を明記することで,自衛隊は国家機関となります.現在,憲法に明記されている国家機関は,衆議院,参議院,内閣,裁判所,会計検査院の5つです.これに自衛隊が加わることにより自衛隊の活動範囲は広がり,制服を着た自衛官が国防教育を行うといったことが起こらないとも言えないといいます.
憲法前文では,「われらは,全世界の国民が,ひとしく恐怖と欠乏から免かれ,平和のうちに生存する権利を有することを確認する.」とうたっています.この意味についての解説も説得力があります.
軍事力によらないで平和を築いていく道,平和への権利が国際的にも認められつつある現状を見ると,今の憲法の先駆性がはっきりします.
多くの人に読んで欲しい本です.
びえい・ヘルシーマラソン ― 2018/06/11 14:20
十勝岳連峰は雲に見え隠れ
2018年6月10日(日),爽やかな気候の中で表記大会が行われました.今年もクォーターマラソン(10.548km)にでました.
美瑛の市街地は,更新世前期の美瑛火砕流堆積物の台地に囲まれ,美瑛川と置杵牛川(おききねうし・がわ)が合流する地点の沖積低地につくられた街です.
1926年5月24日に起きた十勝岳の噴火で,泥流が美瑛川沿いに流れ下り,ヘルシーマラソンのゴールとなっている丸山公園のすぐ近くの丸山橋付近まで達しました.地質調査総合センターの十勝岳火山地質図の解説では,美瑛駅の少し先まで泥流が達したとしています.
クォーターマラソンは,丸山公園南の道路を出発し西に向かい,緑橋を渡って火砕流台地を登っていき折り返します.台地を下り水沢川沿いの道路を走り,丸山橋を渡ってゴールします.標高差は約60m です.
薄日が射す程度の曇り空で,風は冷たく,あまり汗をかかないで走ることが出来ました.
この大会は,事前にゼッケンと計測タグ,参加賞の Tシャツを送ってくれるので,当日,かなり時間の余裕が出来ます.
深川市の向陽橋付近から見た暑寒の山
まだ雪はかなり残っています.左に緩く傾斜した尾根の山は,多分,恵岱岳(えたい・だけ)でしょう.玄武岩溶岩です.
ランニング用の靴 ― 2018/06/12 16:33
これまで色々なランニング用の靴を使ってきました.使っていて一番悲しいのは,靴底は十分使える状態なのにアッパーの薬指の部分が破れてきて使えなくなることです.
一番履きやすかったのは,トレイルランニング用に買ったモントレイルでした.でも,アッパーの薬指のところが破れてきて,しばらく自分で縫ったりして履いていましたが,薬指が飛び出してきてしまい諦めました.
サロモンのトレイルランニング用の靴は,アッパーはほとんど傷まずに使い続けることが出来ました.しかし,とうとう靴底に穴が開いてしまい,そろそろ限界かなと思っています.
こんな丈夫なつくりの靴があるのにビックリです.
靴を上から見たところ
履き口の前の方が少し,すれてきている程度で,ほとんど問題はありません.靴紐は,少し緩みやすくなった感じがしますが問題ありません.引っ張って止めるタイプです.
靴の底
右足のかかと付近に穴が開いてきました.グリップ性もかなり落ちてきました.もう限界かなと思います.