大森一人氏:生物源炭酸塩骨格をもちいた地球環境変動の復元2018/04/17 14:11

2018年4月15日(日)午後3時15分から16時半まで,札幌駅北のエルプラザで,表記の講演会が開かれました.地学団体研究会北海道支部総会の特別講演です.


大森氏は広島大学から北大大学院に進み,現在は道立総合研究機構・地質研究所に勤務しています.地質研究所では資源環境グループに属し,主に温泉・地熱資源の起源について研究を行っています.


講演内容です.


無機的な炭酸塩鉱物としては,温泉や地熱発電の配管で発生するスケール,トラバーチン(石灰華),鍾乳石などがあります.生物起源の炭酸塩鉱物としては,微化石,サンゴ,魚の耳石などがあります.


古環境を示す代替指標(プロキシ:proxy)として様々なものがありますが,二枚貝の成長縞は1日単位,サンゴや海綿は10日単位,年輪は1年単位の精度を持っています.

サンゴの年輪は1年で1~3cmほど成長するので0.2mmほどで削った試料を分析して古環境の変動を推定します.


硬骨海綿は寿命が700年ほどで,成長速度が年間1mm前後とサンゴなどに比べて遅いため,少量の試料で長期間の変動を見ることが出来ます.炭酸塩骨格を持ち年輪を形成します.棲んでいる場所が,洞窟の入口や岩陰などの日の当たらない場所であることや水深が深いことなどの特徴があります.

12Cと13Cの比(δ13C)や16Oと18Oの比(δ18O),SrとCaの比やMgとCaの比などが代替指標として使えます.

暴風による高潮や地震による津波など事件があると成長障害が出ます.これを使って古津波の発生年代の推定を行うこともできます.


以下感想です.

*機器の進歩はもちろんですが,微少な試料での分析が出来るようになったことなど,技術の進歩が新しい可能性をもたらしているのを感じました.

**北大地鉱教室の加藤 誠先生が出席され,いろいろと質問をされていたのが印象的でした.先生は,1932(昭和7)年3月生まれですから今年86歳です.