地図の著作権セミナー2017/12/17 10:51

 2017年12月15日(金),午後1時半から4時半まで,札幌市の「かでる2・7」で標記セミナーが開かれました。主催は,「Digital 北海道研究会」です。

内容は下のようなものでした。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
13:30〜13:35 開会の挨拶
13:35〜14:30 基調講演:「著作権法と地図の利用」
           アンパサンド行政書士事務所代表行政書士 
           池田 玲菜氏
14:30〜15:00 講演2:「国土地理院の地図等の利用手続きと地理院地図の紹介」
           国土交通省国土地理院北海道地方測量部地理空間情報管理官 
           傳法谷 孝雄氏
15:00〜15:15 休 憩
15:15〜15:40 講演3:「自由な地図OpenStreetMapの利用と参加」
           株式会社MIERUNEOpenStreetMap Foundation Japan 運営委員 
           古川 泰人氏
15:40〜16:05 講演4:「多様な利用シーンで活用できる商用地図“GEOSPACE”の紹介」
           NTT空間情報株式会社 
           山木 啓至氏 、曽根田 眞二氏
16:05〜16:15 質疑応答
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


地図の著作権セミナー池田氏
                       基調講演の池田玲奈氏

 いくつか感想です。

・地図の著作権については,基本的なことを頭に入れておく必要があると感じました。
 地図は,著作権法 第十条六項で著作物として例示されています。図表,模型も著作物になります。著作者は,著作者人格権と財産権を有しています。それぞれの権利はさらに細かく分けられています。
 疑問に思ったら専門家に相談するのが良いのでしょう。

・著作権の制限規定があります。
 私的使用のための複製は認められています(同法 第三十条)。どのくらいの人数まで私的使用と認められるかは難しいところだそうです。制限規定には,さらに制限があるので注意が必要です。
 引用については所定の要件を満たす必要があります。公表されたものであること,引用と分かるようにはっきりと区別すること,出所を明示することなどです。

・地理院の地図については,より自由に使えるよう検討が進められていて,来年3月までには答申が出るそうです。2017年9月時点での中間報告がウェブに載っています。
( 例えば,http://www.gsi.go.jp/common/000194382.pdf )

・オープン・ストリート・マップ(OSM)は,市街地の地図はそれなりに使い道がありそうですが,等高線が表示されていないので,コンサル業務ではあまり使い道はないと思いました。
 ただし,誰でも地図の作成に参加できるので,グーグルマップより詳細な部分があるそうです。
( https://mierune.co.jp )( http://www.osmf.jp/home )

・NTT空間情報株式会社の GEOSPACE は,一部の山間地を除いてほぼ全国をカバーしていて3km^2(1画角)1万5千円だそうです。詳しくは,下のウェブサイトです。
( http://www.ntt-geospace.co.jp )

 余談ですが,このセミナーでは,"sli.do" と言う道具が使われました。
 ウエブサイトを利用して,参加者がスマホなどで質問を出すとそれがスクリーンに映し出されるという道具です。質問用紙がいらず,会場のみんなが質問内容を見ることができるので便利です。結構,質問が出されていました。
( https://www.sli.do )

2017年度 土砂災害予測に関する研究集会2017/12/17 13:30

 標記講演会が,2017年12月7日(木)と8日(金)に防災科学技術研究所で開かれました。たまたま,神奈川に行っていたので,7日だけ参加しました。
 つくばは遠いと実感しました。秋葉原から「つくばエクスプレス」に乗り「つくば駅」へ。秋葉原までで,すでに1時間半かかっていました。
 幸い,防災科研のマイクロバスに乗れたので,無事到着しました。ただし,つくば駅でウロウロしたので昼飯を買うことができず,この日は昼飯抜きになりました。


号再科学技術研究所
写真1 防災科学技術研究所の玄関


千木良氏
写真2 講演する千木良氏

 7日の内容は次のとおりです。8日は,セッション2から4までが行われました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

特別講演 千木良雅弘氏(京都大学防災研究所):深層崩壊発生の準備過程としての重力斜面変形

<セッション1:重力変形地形と深層崩壊発生予測>

木下篤彦氏(国土技術政策総合研究所)ほか:紀伊山地における深層崩壊危険箇所の特徴と水文・水質調査について

内田太郎氏(国土技術政策総合研究所)ほか:深層崩壊発生場所の予測と山脚固定効果の定量化の試み

西井稜子氏(新潟大学)・木村克己氏(防災科学技術研究所):付加体の地質構造が大規模崩壊の発達に及ぼす影響:南アルブス アレ沢崩壊の例

小嶋 智氏(岐阜大学):中部日本の高山〜低山域の付加体分布地域に発達する山体重力変形地形の特徴と発達過程

木村克己氏(防災科学技術研究所):斜面崩壊に認められる付加体の地質構造制約

永田秀尚氏(風水土):断層・破砕帯とランドスライド:素因・過程・結果

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 感想です。

・近年,様々な手段が開発され斜面変動についても精度が上がってきています。
 特に,レーザー測量の威力は大きく,微地形を見事に捉えることができます。さらに,地形解析も様々なソフトが開発されてきているのが印象的です。

・一方で,木下氏の報告のように,地形的に岩盤クリープを起こしていると判断された地域で湧水の電気伝導度を測定すると周辺に比べ高い値を示すことから,崩壊危険斜面を抽出するという手法は簡便で効果的な方法と思います。

・小嶋氏は上高地・梓川西の北東−南西方向の尾根に見られる凹地(二重山稜)の堆積物を調査し,山体重力変形の履歴を明らかにして危険度判定に役立てようとしています。このような地道な調査は貴重です。

・付加体堆積物では,デュープレックス構造が発達していることがあります。これが斜面崩壊の素因となっている例を木村氏は紹介しました。大規模な崩壊では,その地質体が持っている地質構造に注意する必要があると言うことです。

 講演内容からは,時間をかけて出かけただけのものが得られました。