日本応用地質学会北海道支部 2017個人・招待講演会2017/06/24 14:39

 前日の日本応用地質学会北海道支部に続いて,日本地質学会北海道支部の個人・招待講演会が2017年6月17日(土)に開かれました。場所は,北大理学部5号館の大講堂でした。個人講演は8件でした。


 最初に,宮坂ほかによって,翌18日に日行われた『2017年春巡検 「札幌の失われた川を歩く」の紹介』が行われました。

 二つほど紹介します。


 林 圭一・川上源太郎・廣瀬 亘・渡辺真人,北海道東部能取湖周辺の新第三系層序と渦鞭毛藻シスト化石-渦鞭毛藻シスト群集に基づく堆積場の古環境変遷-


 網走地域の能取湖周辺の新第三紀層は,常呂層,網走層,能取(のとろ)層,呼人(よびと)層です。能取湖東岸では珪藻化石による年代が明らかにされていますが,西岸では詳細な地質年代は不明でした。渦鞭毛藻シストと年代測定によって,この地域の層序と年代対比の再編を行いました。時代の新しいものから要点を記します。

1)能取湖西岸の上部呼人層は東岸の能取層~呼人層に対比されます。

2)西岸の下部呼人層は中期中新世~後期中新世前期に対比されます。泥岩主体であることから網走層の同時位相の鱒浦層に対比されます。

3)東岸の能取層は中期中新世(16Ma-12Ma)です。

4)西岸の能取層は漸新世~中期中新世前期以前に対比されます。ジルコンの放射年代は20Ma(2千万年前),フィッショントラック年代は15.5Maです。このことから,前期中新世に対比されます。常呂層の一部として再定義しました。

5)常呂層上部の砂岩部層上部層・泥質砂岩部層は放射年代,フィッショントラック年代とも21Maです。

6)常呂層下部の礫岩部層・砂岩部層は後期漸新世(28Ma~23Ma)に対比されます。


 渦鞭毛藻シスト化石群集から当時の堆積場を推定すると,網走層上部から呼人層下部,つまり中期中新世から後期中新世にかけて(16Ma~5.3Ma)堆積場が急激に深海化しました。


*渦鞭毛藻というのは,泳ぐ推進力を生み出す2本の鞭毛を持った単細胞藻類です。主に海に棲んでいますが淡水にも棲んでいて,休眠状態では厚くて強い膜に包まれたシスト(cyst:休眠体)になります。これが化石として残りやすいのです。

**放散虫による層序年代によって、日本の地質についての解釈が大きく変わったことを思い出してしまいました。


栗原憲一氏

                講演する栗原憲一氏


招待講演:栗原憲一,地質学会が選定する北海道の化石「アンモナイト」について


 日本地質学会は,2016年5月10日の「地質の日」に「県の石」などを発表しました。北海道は、石として「かんらん岩」,鉱物に「砂白金」,化石に「アンモナイト」が選ばれました。


 北海道のアンモナイトについては,松浦武四郎が「カボチャ石」としてスケッチを描いている(東蝦夷日誌 五編。1870(明治3)年)ほか,ライマンも記述しています(北海道地質總論,1878(明治11)年)。

 アンモナイトはオーム貝やイカの仲間なので,アンモナイトの内部構造を調べることとあわせて,ある程度どのような生活をしていたかを推定できます。

 卵からふ化した直後の殻の直径は0.5~2mm程度で,大きくても10mmです。ふ化直後は比重が海水より小さく浮遊性であったと考えられます。海水を噴出する「ろう斗状」の器官があり,移動能力があったため生息場が広かったと考えられます。

 アンモナイトが死ぬと殻の中に海水が入り,海底に沈んでいくと考えられます。

 アンモナイトの中には,こんがらかったような巻き方をしているものがありますが,この巻き方も規則性があることが分かっています。

 この異常巻きのアンモナイトの一種が浦幌町の茂川流布川(もかわるっぷ・がわ) で見つかりました。産出した層準は,K-Pg境界の直下で6,680万年前です。北太平洋最後のアンモナイトとされています。

 博物館学芸員として,学術,教育,技術(保存など)の三つを総合的に進めていきたいと考えています。


*栗原さんのアンモナイトの話を聞くのは二度目ですが,いつも,その面白さに引きつけられます。

**私が学生の頃は,九州大学の故松本達郎氏がアンモナイト研究で大きな業績を上げていました。1980(昭和55)年に,松本氏が昭和天皇にご進講した際のアンモナイト化石標本が,九州大学総合研究博物館に残っているそうです。


 なお,この講演会の要旨は下のサイトからダウンロードできます。

( http://www.geosociety.jp/outline/content0023.html の「北海道支部平成29年度例会(個人講演会)」



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