本の紹介:一歩前へ出る司法2017/06/10 13:15


一歩前へ出る司法
泉 徳治,渡辺康行・山本 一・新村とわ=聞き手,一歩前へ出る司法 泉徳治元最高裁判事に聞く。日本評論社,2017年1月。

 元最高裁判所・判事の泉氏に3人の憲法学者が話を聞いた記録です。
 泉氏は,1961(昭和36)年に京大法学部を卒業して,東京地裁・判事補を振り出しに主に司法行政畑を歩いてきて,最高裁・事務総長,最高裁・判事を勤めて定年退官しました。現在は,法律事務所の顧問弁護士です。

 幾つか印象に残った言葉を引用します。

 違憲審査を行う手法としては,まず最初に侵害されている「個人の権利」が憲法上でどのように位置付けられるものかを審査し,次にその権利を制約している法律上の「制度」が合理的かつ必要なものであるかを審査すべきです。

 最高裁の審査は,一般的に,憲法上の個人の権利を飛ばして,法律上の「制度」に必要性・合理性があるかないかを審査し,制度に必要性・合理性があれば合憲であると判断する傾向があります。(以上,206頁。婚外子国籍確認訴訟判決に関連して)

 一人でも二人でも別の角度から意見を述べる人がおれば,全体の議論が深まるのです。結局は,民主政のシステムを修復するのは司法の役割だという認識を欠いているのだと思います。(244頁。退官後の東京都議会議員定数是正訴訟の原告として)

 任命自体が不透明なのですから,国民審査が機能するわけがないですね。ブラックボックスに裁判官任命諮問委員会という小窓を付ける方が先決だと思います。(266頁。最高裁裁判官の国民審査制度に関して)

 後方支援といえども,武力衝突中の一方の当事国を支援する,同盟国の武器の防護といえども,他国と交戦中の国を支援するということになれば,自衛の範囲を超えて国際紛争を解決する手段として自衛隊を用い交戦することになり,明らかに九条の枠を越えることになると思います。(280頁。九条問題について)

 現在,「安保関連法違憲国家賠償請求・差止め請求」が東京,福島,札幌など,全国20の地方裁判所に提訴あるいは提訴しようとされています。
 札幌では,2017年6月9日に第1回口頭弁論期日が開かれ,3人の原告と訴訟代理人の弁護士3人が意見陳述を行いました。

 この中で,訴訟代理人の一人,寺井一弘弁護士(東京弁護士会)は,「私どもは,裁判所が憲法の平和主義原則に基づく法秩序の回復と基本的人権保障の機能を遺憾なく発揮されることを切に望むものです。」と述べています。

 本当に,今ほど司法が「一歩前に出る」ことを求められている時期はないと思います。


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