気候変動に伴う積雪寒冷地の地盤災害に関するシンポジウム2017/06/05 16:45

 表記シンポジウムが,2017年6月2日(金)に寒地土木研究所の講堂で開かれました。

 地盤工学会北海道支部の「気候変動に伴う積雪寒冷地の地盤災害リスクに関する研究委員会」は,2014(平成26年)から2016(平成28)年の3年間,災害事例や対策方法について情報収集を行ってきたました。それらの情報を体系的にまとめた報告書についてのシンポジウムです。
 当日,報告書のプリントしたものとCD(pdf)が配られました。
 なお,この委員会の委員長は,石川達也北大工学部教授(地盤環境解析学研究室)です。

 北海道で発生する気候変動に関連した地盤災害を,1)融雪期災害,2)豪雨災害,3)凍上災害の三つに絞って検討しています。


石川達也北大教授
写真 挨拶する石川達也北大教授

<気候変動について>

 日本気象協会北海道支社の松岡直基防災対策室長が「土砂災害の誘因となる北海道の気象」と題して講演しました。

 従来,北海道に大雨をもたらす気象条件は,前線が北海道付近にかかり,東に高気圧があるという気圧配置のもとで,台風が接近するというものでした,2016年8月の豪雨,特に8月末の台風10号による豪雨は,日高山脈に南からの風がぶつかり地形性豪雨をもたらしました。
 これまで,本州などでよく見られた「線状降水帯」が北海道でも発生しています。2014年9月の支笏湖周辺に大雨を降らしたのがこれです。

 注目すべき現象として,北海道アメダスの記録によると「1時間30mm以上の短時間強雨の100地点当たりの年別発生回数」は,2010(平成22)年以降,それまでの2.1倍になっていることがあります。

 融雪量を加味した中山峠付近の土壌雨量指数(14年間分)と災害発生の履歴を見ると,土砂災害の発生した2012年(国道230号のKP40.6と同40.8での斜面崩壊)は1位,2000年(無意根地すべり)は3位の値となっています。このことから,融雪期の災害については,この土壌雨量指数が有効です。

<気候変動を考慮した治水計画>

 2016年8月16日から8月24日までに台風7,11,9号と3つの台風が北海道に上陸しました。さらに8月29日には台風10号が接近して日高地方に大雨を降らせました。日本の東に太平洋高気圧,西にチベット高気圧が停滞したため,台風が太平洋を北上しました。

 北海道に上陸・接近した台風は,2010年頃までは日本海を通ってくるものが60%以上を占めていましたが,2011年以降は15%に激減し,太平洋を通ってくる台風が55%を占めています。

 集中豪雨をもたらす線状降水帯は,20世紀は年平均 5.8 個に対し,21世紀には同 8.9 個発生していて,2010年には21個発生しています。本州が高気圧性でオホーツク海側が低気圧性の気圧配置の場合に,線状降水帯が多く発生しています。海面水温が高く温暖な空気が日本海側から流入する場合に多く発生しています。

 温暖化が進み,地球全体の平均気温が 2 ℃上昇した場合,石狩川流域では年最大降水量は,1.2 倍となります。これをもとに流域の浸水総面積を計算すると2.2 倍となります。

 将来予測をする場合,観測網の充実とともに1)降雨の空間的,時間的不確実性,2)河川流量・水位の不確実性,3)流域の総貯留量の不確実性,4)堤体内部の土質分布の不確実性(摩擦角と粘着力の関係)などを含めた検討を行う必要があります。
 超過確率と不確実性をかけ算することでリスクを表現する必要があります。


X-rain
図 地上雨量計による降水量の分布(左)と実際の降雨分布のイメージ(右)
 250mメッシュで区切った領域も均質ではなく,実際にはムラがある。このような不確実性が,河川流量・水位や堤防の安定計算でも出てくる。(下記参考文献から)

(参考文献)
 山田朋人,2016,北海道における近年及び将来の豪雨形態。平成28年8月北海道大雨激甚災害を踏まえた水防災検討委員会。
( https://www.hkd.mlit.go.jp/ky/kn/kawa_kei/splaat0000001ht4.html>山田朋人委員説明資料 [2017年6月3日現在])

<リスク評価手法>
 道路や鉄道では降雨時の地盤災害発生を事前に予見して適切な時期に規制を行う必要があります。
 一般的に行われてきた方法は,時間雨量と累積雨量を指標として交通規制・運行規制をする方法です。連続雨量で運行規制がかかると,降り止んでから12時間は運転再開ができないという欠点があります。
 これを修正する方法として,土壌雨量指数を用いる方法,限界雨量を用いる方法,実効雨量の半減期を利用する方法などが開発されています。
 これらの方法で設定した短期雨量と長期雨量を用いて,土砂災害危険度指標図に現在降っている雨を時系列で結んだスネーク曲線を描きます。この曲線が災害発生の危険基準線(CL:Critical Line)を越えた場合,災害の危険があると判断します。CLの決定には,その付近での過去の災害事例が不可欠です。
 
<凍結指数>
 凍結指数は地盤の凍結深さを推定するための指数です。凍結深さは凍結指数の平方根に比例します。凍結指数の算出は,日平均気温を積算していって数値が減少する期間,つまり日平均気温がマイナスの期間の累積幅から求めます。
 帯広,釧路,旭川,札幌などは 120 年以上の気温のデータがあります。このデータを使って凍結指数の経年変化を見ると,いずれの地点も凍結指数は減少しています。帯広で年当たり−4.1℃・days,札幌で同じく−2.7℃・daysの減少です。
 年降水量や最大積雪深などが顕著な傾向を示さないのに比べ,はっきりとした傾向を示しています。

 なお,気象庁のデータでは,日本の年平均気温の1898年から2016年までのトレンドは,100年当たりで+1.2 ℃となっています(2017年6月5日現在)。

 この5年ほどの間に北海移動で発生した土砂災害は,新たな視点で災害を見ることを求めているようです。データの蓄積とともに新しい手法で迅速・正確に予測できるようになり,犠牲者を出さないようになればと思います。


夏らしくなりました2017/06/05 17:23

 しばらく,どんよりとした曇り空や雨降りが続き,日曜日は堪らず暖房を入れました。6月に暖房を入れたのは,初めてのような気がします。

 今日は一転して気持ちの良い青空が広がり,空気も澄んでいます。午後,自転車で出かけました。


手稲山
写真1 タマネギ畑の向こうに手稲山
 タマネギは,すでに苗を植え終わったところもあります。正面が手稲山で,その左に百松沢が見えます。


藻岩山
写真2 藻岩山
 左手の手前が藻岩山です。ここはタマネギの苗を植え終わっています。


石の壁
写真3 モエレ沼の陸上競技場脇の石の壁


ガラスのピラミッド
写真4 ガラスのピラミッド


モエレ山
写真5 北から見たモエレ山
 下から見ると一気に登れそうに見えますが,結構手強いです。22段毎に11個の踊り場があります。

 月曜日の日中ですが,かなり人が来ていました。


本の紹介:一歩前へ出る司法2017/06/10 13:15


一歩前へ出る司法
泉 徳治,渡辺康行・山本 一・新村とわ=聞き手,一歩前へ出る司法 泉徳治元最高裁判事に聞く。日本評論社,2017年1月。

 元最高裁判所・判事の泉氏に3人の憲法学者が話を聞いた記録です。
 泉氏は,1961(昭和36)年に京大法学部を卒業して,東京地裁・判事補を振り出しに主に司法行政畑を歩いてきて,最高裁・事務総長,最高裁・判事を勤めて定年退官しました。現在は,法律事務所の顧問弁護士です。

 幾つか印象に残った言葉を引用します。

 違憲審査を行う手法としては,まず最初に侵害されている「個人の権利」が憲法上でどのように位置付けられるものかを審査し,次にその権利を制約している法律上の「制度」が合理的かつ必要なものであるかを審査すべきです。

 最高裁の審査は,一般的に,憲法上の個人の権利を飛ばして,法律上の「制度」に必要性・合理性があるかないかを審査し,制度に必要性・合理性があれば合憲であると判断する傾向があります。(以上,206頁。婚外子国籍確認訴訟判決に関連して)

 一人でも二人でも別の角度から意見を述べる人がおれば,全体の議論が深まるのです。結局は,民主政のシステムを修復するのは司法の役割だという認識を欠いているのだと思います。(244頁。退官後の東京都議会議員定数是正訴訟の原告として)

 任命自体が不透明なのですから,国民審査が機能するわけがないですね。ブラックボックスに裁判官任命諮問委員会という小窓を付ける方が先決だと思います。(266頁。最高裁裁判官の国民審査制度に関して)

 後方支援といえども,武力衝突中の一方の当事国を支援する,同盟国の武器の防護といえども,他国と交戦中の国を支援するということになれば,自衛の範囲を超えて国際紛争を解決する手段として自衛隊を用い交戦することになり,明らかに九条の枠を越えることになると思います。(280頁。九条問題について)

 現在,「安保関連法違憲国家賠償請求・差止め請求」が東京,福島,札幌など,全国20の地方裁判所に提訴あるいは提訴しようとされています。
 札幌では,2017年6月9日に第1回口頭弁論期日が開かれ,3人の原告と訴訟代理人の弁護士3人が意見陳述を行いました。

 この中で,訴訟代理人の一人,寺井一弘弁護士(東京弁護士会)は,「私どもは,裁判所が憲法の平和主義原則に基づく法秩序の回復と基本的人権保障の機能を遺憾なく発揮されることを切に望むものです。」と述べています。

 本当に,今ほど司法が「一歩前に出る」ことを求められている時期はないと思います。


2017美瑛クォーターマラソン2017/06/12 20:55

 今年も美瑛マラソンのクォーター(10.548km)に出ました。大体の正味時間は,1時間15分07秒で去年と同じ程度でした。1kmを7分7秒くらいで走ったことになります。情けないと言えば情けないですが,今の練習量では仕方のないところと思っています。
 ちょっと肌寒い気温で終盤は雨にも当たったので,条件は非常に良かったです。もう少し時間を短縮できれば良かったのですが,その辺がちょっと心残りです。

 今年は,30回記念大会と言うことで,立派なTシャツをもらいました。ポリエステル100%なので,軽い上に洗ってもすぐ乾くので重宝します。


Tシャツ
写真1 30回大会記念Tシャツ
 事前に送ってくれたので,レースの時に着ている人が結構いました。

 今年は事前にナンバーカードなどを送ってくれたので,準備を整えてスタート時間の10時までに行けば良いので,ずいぶん気が楽になりました。

 帰りは穂別博物館に寄って「むかわ竜」の骨を見ようと思っていたのですが,途中,湯の沢温泉に浸かったので時間がなくなってしまいました。


湯の沢温泉
写真2 占冠村の湯の沢温泉
 昔,道道占冠落合線のトンネル工事をしていた時,計測会社の人たちがここに泊まっていました。その時に比べたら,ずっときれいになりました。

 夕方の夕張・千鳥ヶ滝と道道滝下由仁(停)線沿いの麦畑は見応えがありました。


千鳥ヶ滝
写真3 夕日に照らされる千鳥ヶ滝
 いつ見ても魅力的な滝です。上流に白く帯状に見えるのは,北海道企業局の滝の上発電所の取水堰堤から落ちる水です。この発電所は,昔は北海道炭礦汽船株式会社の滝之上発電所でした。


由仁の麦畑
写真4 道道滝下由仁(停)線沿いの麦畑
 見事な麦畑が広がっていました。夕張川が低地へ出てすぐの,山際の段丘面周辺に広がっています。


本の紹介:シュメール人の数学2017/06/20 21:38


シュメール人の数学
室井和男,コーディネーター 中村 滋,シュメール人の数学 粘土板に刻まれた古の数学を読む。2017年6月,共立出版。

 今から4,600年前(紀元前26世紀)から4,000年前頃までのシュメール人の数学の概説書です。
 シュメールというのは,「葦の多い地方」という意味で,ティグリス川とユーフラテス川に挟まれたメソポタミアの河口地域です。治水が難しく,たびたび大洪水に悩まされました。今のイラクです。
 この時代は,日本では「縄文中期の小海退」の時期です。青森県の三内丸山遺跡が,この時代に相当します。

 著者は数学的視点から粘土板を読んで,シュメール人の数学を明らかにするために,この本を書きました。楔形文字の読み方から始まって,粘土板から数学的な部分を読み取って解説しています。

 非常に興味深い内容が一杯ですが,60進法の起源の部分が一番感心しました。360日で1年が元に戻ると言うことが 60進法の起源だと言うことです。円が360度というのも,ここからきていると考えます。

 若い人が挑戦して,新しい発見をして欲しい分野だと思いました。


日本応用地質学会北海道支部 研究発表会2017/06/23 14:52

2017年6月16日(金)に物理探査学会との共催で,表記発表会が開かれました。興味のあった発表について述べます。


伊東佳彦氏

     開会の挨拶をする伊東佳彦氏(日本応用地質学会北海道支部 支部長)


岡崎賢治・倉橋稔幸・山崎秀策:トンネル施工時の速度検層と岩石試験よる弾性波速度に関する一考察


北海道では,トンネル施工時に切羽から水平(先進)ボーリングを行って切羽前方地質を確認し,速度検層や岩石試験の結果を含めて地山分類を見直しています。

火山岩を地山とするトンネルで得られたデータを使って,速度検層の弾性波速度と岩石試験による弾性波速度(超音波伝播速度)について検討しました。

なお,水平ボーリングの坑内速度検層による弾性波速度をVph,ボーリングコアによる弾性波速度をVpcと表示しています。


結果の概要は次のとおりです。

1)VpcとVphの関係は,Vpc=1.08Vphでした。

 2)Vph>Vpc,つまり,速度検層の弾性波速度(地山弾性波速度)がコアの弾性波速度よりも速い試料が,380試料中134試料(36%)ありました。

3)コアの弾性波速度は,有効間隙率の増加とともに低下します。

 4)有効間隙率が20%以上のコアでは,ボーリング掘削から測定までに時間をおくと,明らかにコアの弾性波速度が低下します。


 *凝灰岩のように空隙の多い地山のコア試験は,ボーリング後の資料の保存方法に工夫が必要です。また,できるだけ早く試験することが望ましいです。


鈴木浩一・田中和弘・徳安真吾・浅野慶治:新第三紀堆積軟岩地点における電磁探査法による泥火山調査


新潟県・十日町と台湾・烏山頂(Wushanding)の泥火山で深度約1kmまでの比抵抗構造が把握できる電磁探査を行い,泥溜まり(マッドチャンバー)の存在と流体の経路を推定しました。

十日町の泥火山は北越急行ほくほく線・鍋立山(なべたちやま)トンネルの難工事区間の上に位置しています。ここでは,地下300m~800m付近にマッドチャンバーと泥火山の通路となったと思われる低比抵抗部が検出されました。

烏山頂でも同じように深度300m~500mに低比抵抗帯があり,また周囲に推定されていた断層部分でも低比抵抗帯が検出されました。

これらの結果から,十日町のように背斜軸にある泥火山では,地下に泥溜まりが形成されその後陥没が発生してその周辺に泥火山ができると考えられます。一方,断層沿いでは断層に沿って流体が上昇してそのまま噴出する,あるいは褶曲軸に沿って移動し泥溜まりを作って噴出するといった二つのパターンが考えられます。


*鍋立山の難工事区間では,膨潤圧のほかにガス圧が作用したと言われています。その正体がこの地下構造にあったのだと納得いきました。


草茅太郎・鈴木敬一・森島邦博・成田浩司:原子核乾板とシンチレータ方式による宇宙線ミュー粒子探査の比較


ミュー粒子探査は,1955年頃から始められました。割合歴史は古いです。

この発表で比較した測定方法は,次の二つです。

 1)原子核乾板を用いる方法:荷電粒子の通過によって乾板にできた潜像核による飛跡を処理することによって観測対象の内部構造を求めます。

 2)シンチレータを用いる方法は,荷電粒子が通過すると微弱に発光をするプラスチックの微弱光を高感度センサで検出します。


    表-1 原子乾板とシンチレータ方式の比較(当日資料から)


原子核乾板

シンチレータ方式

電源

不要

必要

空間分解能

高い

低い

大きさ・重さ

薄い・軽い(葉書程度)

大きい・重い(約2m)

取り扱い

易しい

難しい(光電子倍増管)

時間分解能

無し

有り

データ読み出し

遅い

早い

温度耐性

低い(約30℃)

高い(約70℃)

 

比較実験は大谷石の採掘跡のさらに下の坑道で行い,上の採掘坑道がうまく捉えられるか試験しました。

結果は次のとおりです。

 1)原子乾板方式は角度分解能が高いため,空洞の影響をより明瞭に捉えることができました。

 2)シンチレータ方式は時間分解能が高いため,同一機器で複数の方向を観測できました。


 地質の話から物理探査の話まで,豊富な内容の発表会でした。




日本応用地質学会北海道支部 2017個人・招待講演会2017/06/24 14:39

 前日の日本応用地質学会北海道支部に続いて,日本地質学会北海道支部の個人・招待講演会が2017年6月17日(土)に開かれました。場所は,北大理学部5号館の大講堂でした。個人講演は8件でした。


 最初に,宮坂ほかによって,翌18日に日行われた『2017年春巡検 「札幌の失われた川を歩く」の紹介』が行われました。

 二つほど紹介します。


 林 圭一・川上源太郎・廣瀬 亘・渡辺真人,北海道東部能取湖周辺の新第三系層序と渦鞭毛藻シスト化石-渦鞭毛藻シスト群集に基づく堆積場の古環境変遷-


 網走地域の能取湖周辺の新第三紀層は,常呂層,網走層,能取(のとろ)層,呼人(よびと)層です。能取湖東岸では珪藻化石による年代が明らかにされていますが,西岸では詳細な地質年代は不明でした。渦鞭毛藻シストと年代測定によって,この地域の層序と年代対比の再編を行いました。時代の新しいものから要点を記します。

1)能取湖西岸の上部呼人層は東岸の能取層~呼人層に対比されます。

2)西岸の下部呼人層は中期中新世~後期中新世前期に対比されます。泥岩主体であることから網走層の同時位相の鱒浦層に対比されます。

3)東岸の能取層は中期中新世(16Ma-12Ma)です。

4)西岸の能取層は漸新世~中期中新世前期以前に対比されます。ジルコンの放射年代は20Ma(2千万年前),フィッショントラック年代は15.5Maです。このことから,前期中新世に対比されます。常呂層の一部として再定義しました。

5)常呂層上部の砂岩部層上部層・泥質砂岩部層は放射年代,フィッショントラック年代とも21Maです。

6)常呂層下部の礫岩部層・砂岩部層は後期漸新世(28Ma~23Ma)に対比されます。


 渦鞭毛藻シスト化石群集から当時の堆積場を推定すると,網走層上部から呼人層下部,つまり中期中新世から後期中新世にかけて(16Ma~5.3Ma)堆積場が急激に深海化しました。


*渦鞭毛藻というのは,泳ぐ推進力を生み出す2本の鞭毛を持った単細胞藻類です。主に海に棲んでいますが淡水にも棲んでいて,休眠状態では厚くて強い膜に包まれたシスト(cyst:休眠体)になります。これが化石として残りやすいのです。

**放散虫による層序年代によって、日本の地質についての解釈が大きく変わったことを思い出してしまいました。


栗原憲一氏

                講演する栗原憲一氏


招待講演:栗原憲一,地質学会が選定する北海道の化石「アンモナイト」について


 日本地質学会は,2016年5月10日の「地質の日」に「県の石」などを発表しました。北海道は、石として「かんらん岩」,鉱物に「砂白金」,化石に「アンモナイト」が選ばれました。


 北海道のアンモナイトについては,松浦武四郎が「カボチャ石」としてスケッチを描いている(東蝦夷日誌 五編。1870(明治3)年)ほか,ライマンも記述しています(北海道地質總論,1878(明治11)年)。

 アンモナイトはオーム貝やイカの仲間なので,アンモナイトの内部構造を調べることとあわせて,ある程度どのような生活をしていたかを推定できます。

 卵からふ化した直後の殻の直径は0.5~2mm程度で,大きくても10mmです。ふ化直後は比重が海水より小さく浮遊性であったと考えられます。海水を噴出する「ろう斗状」の器官があり,移動能力があったため生息場が広かったと考えられます。

 アンモナイトが死ぬと殻の中に海水が入り,海底に沈んでいくと考えられます。

 アンモナイトの中には,こんがらかったような巻き方をしているものがありますが,この巻き方も規則性があることが分かっています。

 この異常巻きのアンモナイトの一種が浦幌町の茂川流布川(もかわるっぷ・がわ) で見つかりました。産出した層準は,K-Pg境界の直下で6,680万年前です。北太平洋最後のアンモナイトとされています。

 博物館学芸員として,学術,教育,技術(保存など)の三つを総合的に進めていきたいと考えています。


*栗原さんのアンモナイトの話を聞くのは二度目ですが,いつも,その面白さに引きつけられます。

**私が学生の頃は,九州大学の故松本達郎氏がアンモナイト研究で大きな業績を上げていました。1980(昭和55)年に,松本氏が昭和天皇にご進講した際のアンモナイト化石標本が,九州大学総合研究博物館に残っているそうです。


 なお,この講演会の要旨は下のサイトからダウンロードできます。

( http://www.geosociety.jp/outline/content0023.html の「北海道支部平成29年度例会(個人講演会)」