共謀罪(その3)2017/05/16 15:03

 何のために共謀罪法組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律を作ろうとしているのだろうか。

 やはり,大きな動機は安倍政権が自分のやりたいことをやるために,反対意見を押さえ込むというのが一番大きいのではないかと思います。
 一つの意見として,アメリカで発生した9.11テロ以後,できるだけ早い段階で犯罪を防止するという流れがあるといいます。
 そのために,通信傍受やGPSによる捜査などが取り入れられるようになっています。日本では1999年に盗聴法が成立します。2003年に有事法制成立,2013年に特定秘密保護法成立,2015年に安保法成立,2016年に改正通信傍受法施行,同じく改正刑事訴訟法で司法取引・通信傍受対象拡大などができるようになりました。

 日本でのテロ行為としては,オーム真理教の地下鉄サリン事件が引き合いに出されます。オーム真理教は,1989年に坂本 堤弁護士一家殺害事件を起こしています。しかし,警察は事件性無しとして,この事件の捜査を行っていませんでした。
 オーム真理教は,1995年に地下鉄サリン事件を起こし,その捜査の中で坂本弁護士一家を殺害したことが明らかになりました。
 警察が,適切な対応を取っていれば,地下鉄サリン事件は防げた可能性があったと考えます。何しろ,警察は坂本弁護士一家が失踪したとするデマ情報を流していたのですから。

 日本での犯罪は減っているという,はっきりとした統計があります。例えば,一般刑法犯の発生率は,2002年の2,240人╱10万人を最高値として,2016年には780人╱10万人と激減しています。一般刑法犯というのは,刑法犯から自動車運転による業務上過失致死傷と危険運転致死傷を除外したものです(ウィキペディア,日本の犯罪と治安,最終更新 2017年5月6日 (土) 22:18 )。

 情報通信技術が発達する一方で,犯罪発生率は減少しているという状況があるわけです。そこで,警察の仕事が少なくなるのを防ぐために,犯罪のにおいがしただけ捜査ができる共謀罪を成立させたいという強い意志が法務省・警察庁にあるのではないかという話が出てきます。


共謀罪の過程
図1 犯罪に至る過程と共謀罪(ビデオニュース,2017年4月22日をもとに作成)
 左から右へと犯罪の確実度が高くなります。「漠然とした考え」ではさすがに共謀罪は成立しないでしょう。しかし,法定刑4年以上の犯罪を「決意」した段階で共謀罪は成立します。
 殺人については準備をした段階で殺人予備罪が適用され,窃盗は実行に着手すれば未遂でも窃盗未遂罪があります。

 この法律によって,どれだけ多くの犯罪が作られるかを考えると恐ろしくなります。当然,情報通信技術のための予算と人員が大幅に増えるでしょう。