長瀞(その7)2017/05/14 10:44

 今日一日の露頭めぐりも最後である。ライン下りの船着き場から歩いて野上駅に行った。待つことしばし,電車に乗って隣の樋口駅で降りた。

 樋口駅のプラットホームから見ると,国道を挟んだ向かいの小学校の塀に「水」と書いた看板がある。これはやっぱり「寛保洪水位磨崖標」を見なくてはと行ってみた。


水の看板
写真38 秩父線樋口駅ホームから見た長瀞第二小学校塀の看板
 この看板の水平線まで,荒川河床から24mまで水が来たという(荒川上流河川事務所のウェブサイト)。段丘上にあった集落は,ほぼ水没したという。


磨崖標
写真39 寛保洪水位磨崖標
 長瀞第二小学校の裏へ回り込むようにして行って左に折れると,坂の上り口左手にある。後ろの建物は圓福寺である。
 寛保2年7月27日(西暦1742年8月27日)から4昼夜に及ぶ豪雨によって旧暦8月1日(同8月30日)夜,水位が最高に達し,この付近一帯はすべて水没したという(磨崖標説明看板による)。


水の字
写真40 片岩の壁面に刻まれた「水」の字
 露頭の一番上に「水」の字が見える。この露頭は,多分,泥質片岩である。ここから対岸を見ると家の屋根よりも高い位置にあることが分かる。現在は上流に三つのダムがあり,洪水の危険は小さくなっている。

 ここから国道と並行な細い町道をたどっていくと板石塔婆(いたいし・とうば)に出る。途中やや急な坂があるが,歩道が無く車がビュンビュン走る国道を歩くよりはずっと安心である。坂を上ってしばらく行くと広い道路にぶつかる。これを右に曲がると左手に板石塔婆がある。地理院地図では「野上下郷石塔婆」と表示されている。


板石塔婆
写真41 板石塔婆
 高さ約5m,幅1m,厚さ13cmの一枚岩で作られたもので,樋口駅周辺で掘られた緑色片岩が使われているという(「長瀞たんけんマップ」による)。台座に使われている石には,紅れん石片岩がある。


板石塔婆横
写真42 板石塔婆を横から見る
 表面は微妙にたわんでいるが,この薄さの石材を良く掘り出したものと感心する。長瀞町大字小坂字城山の「仲山城」で討ち死にした阿仁和直家夫人の芳野御前(妙円尼)が十三回忌追善供養で建てたものという(現地説明版による)。建てられたのは1369年11月(応安二年十月)であるので,足利義満が三代将軍に就いた翌年である。南北朝分立の時代である。

 今回の最後の見学地,キャンプ村河原の褶曲に向かう。国道140号から白鳥橋を渡り,右岸の県道を上流に向かって歩く。途中に「岩田の大石(おおいわ)」というのが草むらの中に転がっている。昔は水田であったのであろう。

 県道をしばらく歩いてキャンプ村の入口に着く。このキャンプ場は私設なので,河原に降りるには入口で必ず断ってから行く。
 河原は緑色片岩を主体とする連続露頭で,どこへ行っても褶曲が見られ褶曲のオンパレードである。


岩田の大石
写真43 岩田の大石
 草むらの中にぽつんと石が転がっている。現地説明版によると「新編武蔵風土記稿」に「村名の起こり」と記されているという。後ろの建物は介護老人保健施設である。


緑色岩
写真44 緑色岩の連続露頭
 キャンプ場から降りた河原の露頭状態である。降り口のやや上流から下流を見ている。


褶曲構造
写真45 緑色岩の褶曲構造


褶曲構造
写真46 褶曲構造


褶曲構造
写真47 褶曲構造

 これで長瀞の主要な露頭は見た。多少心残りはあったが帰ることにした。
 白鳥橋で荒川を渡り,すぐに左へ曲がると古い町並みの中を通って樋口駅へ行くことができる。
 
 秩父鉄道で寄居へ出たところで,八高線で八王子へ行こうと思った。しかし,待ち時間が長いので,東武東上線で池袋に出て帰った。
 秩父へは,特急を使わなければ神奈川県からでも4千円ほどで往復できる。秩父鉄道はICカードが使えないが,その他はカードが使えるので結構自由に行動できる。


樋口駅
写真48 秩父鉄道・樋口駅
 秩父方面行きも寄居方面行きも1時間に2本程度の発車間隔である。駅員が不在の場合は,運賃表の右にぶら下げてある小さな「乗降車駅証明書」を取って降りる駅で渡して料金を払う。


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