本の紹介:炎のスプリンター2016/06/14 16:11


炎のスプリンター
炎のスプリンター 人見絹枝自伝。1983年2月,山陽新聞社。(織田幹雄,戸田 純 編著)

 2016年6月2日にNHKBSプレミアムで,人見絹枝を紹介した番組がありました。司会の一人が歴史学者の磯田道史氏,出演は中村桂子氏(生命誌研究者),高野進氏(東海大学教授:400m日本記録保持者)などでした。

 この番組に刺激されて人見絹枝の自伝「炎のスプリンター」を読みました。
 この本は,主に1929(昭和4)年5月に平凡社から出版された「スパイクの跡」と1931(昭和6)年2月に出版された「ゴールに入る」(一成社)の主要部分を採録したものです。

 人見絹枝と言えば,何と言っても1928年の第9回アムステルダム・オリンピックでの800m決勝レースが有名ですが,この本を読むと,最後の直線で2位に上がったあとのことは覚えていないと言います。そして,ゴールして倒れた人見を助けて三段跳びの所まで運んだのが,この大会の三段跳びで優勝した織田幹雄と4位になった南部忠平だったのです。この時,人見は21才でした。

 後半は1930年9月にチェコのプラハで開かれた第3回万国女子オリンピックに5人の若手と一緒に参加し,400mリレーで4位に入り帰国するまでの記録です。選手の選抜から合宿,遠征費の調達までを行っています。
 選手として優れていただけでなく,女子スポーツを発展させたいという熱意を強く持っていたことが分かります。

 最初に述べたNHKの番組で有森裕子氏が涙を流しながら,いろいろ教えて欲しかったと言っていました。人見,有森の二人のオリンピック銀メダリストは,同じ岡山の出身です。
 人見絹枝が多くの人に慕われ,また尊敬されていたことが,番組からもこの本からも良く分かります。