野幌森林公園 ― 2016/05/16 10:56
札幌の東にある野幌森林公園は,南北の尾根を持つ野幌丘陵にあり,江別,札幌,北広島にまたがっている。公園の北西には酪農学園大学などの学校,道立図書館や北海道博物館がある。北東には野幌総合運動公園があり,陸上競技場,野球場,サッカー場,ラクビー場などがある。公園内には遊歩道があり,1周すると20km以上になる。
もっとも行きやすいのは,大沢口と呼ばれている入口で駐車場とトイレがあり,自然ふれあい交流館がすぐ近くにある。
5月14日に大沢口から自転車で公園内を巡った。
大沢口の遊歩道脇にシラネアオイが咲いていた。入口右奥には大きなカツラの木がある。
遊歩道脇にニリンソウとオオバナエンレイソウが群落をつくっている。
大沢口のシラネアオイ
ニリンソウ
オオバナエンレイソウ
遊歩道脇のニリンソウとオオバナエンレイソウ
野幌丘陵をつくっている地質は,下から裏の沢層(シルト層,凝灰質シルト・砂互層,軽石層),下野幌層(含貝化石砂礫層,細礫混り中〜粗粒砂層),音江別川層(礫層,シルト層,中粒砂層),竹山礫層,もみじ台層(砂礫層,砂層),小野幌層(礫層,シルト層,ローム層,泥炭),支笏軽石流堆積物,元野幌粘土層,江別砂層となっている。
このうち,裏の沢層からもみじ台層までの堆積物には海の貝化石が含まれている。裏の沢層の年代は150万年前(前期更新世)とされている。
小野幌層には洞爺火山灰が含まれている。江別のレンガ原料として使われているのは,この地層の粘土や砂である。
遊歩道脇の崩壊地に見られる露頭
大沢池の余水吐け流路に見られる露頭
大沢池も瑞穂池も春紅葉の見頃であった。
大沢池
瑞穂池
帰りに北海道博物館へ寄った。現在,第5回企画テーマ展「アイヌ民族資料を伝え守る力」(入場無料)が6月5日(日)まで開かれている。
中学生以下,65才以上の人は,年齢の分かるものを見せると総合展示室に無料で入ることができる。展示室は明るく見やすく,時間をかけてじっくり見たくなる資料が一杯である。資料の写真撮影は,特別掲示があるもの以外かまわないそうである。小中学生の学習に大変便利である。
北海道博物館の玄関
野幌丘陵北端から石狩低地へ下る坂道
この付近では丘陵と低地の比高は20mほどである。都市圏活断層図では撓曲崖とされているが,活斷層があるというはっきりとした証拠は無いようである。
国道275号の雁来大橋から見た藻岩山
手前は豊平川,左手遠くの三角の山は札幌岳である。
本の紹介:山,わが生きる力 ― 2016/05/16 14:17
白籏史朗,山。わが生きる力。2003年8月,新日本出版社。
山岳写真家,白籏史朗氏の哲学を絡めた体験記で,13年前に出版された本です。白籏氏のウェブサイトではエッセイ集となっていますが,なかなか重い内容を含んでいます。
最初は山についての思いが書かれています。そして,少年時代から青年時代の山登りの話と続きます。
山の写真撮影を仕事とするようになったとは言え,この本から伝わってくるのは,山というか自然の中に身を置いていたいという著者の強い願望です。
「厳しかった登山の思い出」の章では,新雪期の北アルプス北鎌尾根を一人で踏破した記録,積雪期に釜無川支流の大武川を遡り仙水峠に登り南の浅夜峰(アサヨ峰)を目指した山行,富士川支流の早川から入り,沢を詰めて北岳に登り,農鳥岳を経て広河内岳から大井川に降り,ここで塩見岳から伊那谷へ行くという予定を変更した登山の記録などのほかにも,すさまじい山行の様子が述べられています。
著者は中央アジアをはじめ海外の山にも登り,写真を撮っています。これらを含め,あの人を感動させる写真を撮るために,どれだけの精神力と時間と労力,そして費用がかかっているか。著者の生き様を含め感動を呼ぶ本です。
H28年度 地質研究所 調査研究成果発表会 ― 2016/05/20 18:24
表記発表会が,2016年5月19日(木)に北海道総合研究プラザ(北19条西11丁目)で開かれました。
挨拶する秋田藤夫・地質研究所長
口頭発表が7件,ポスター発表が6件でした。
口頭発表は部門別に担当部長が概要の説明を行った後に,個々の発表を行いました。
興味を持った発表について述べます。
内田康人氏ほかの「音響探査により屈斜路湖で確認された湖底地すべり活動」では,1938(昭和13)年の屈斜路地震(M6.1) で発生した津波の原因が湖底の地すべりによるものであることが明らかにされました。高分解能地層探査による湖底の堆積構造断面図から地すべりを推定しました。屈斜路湖南岸の和琴半島の東斜面です。
これに関連した話題として,1741年の渡島大島の山体崩壊による津波シミュレーションの結果が,ポスターで発表されていました(川上源太郎氏ほか)。地質研究所で行った日本海沿岸の津波堆積物調査結果が基礎資料となっています。
加瀬善洋氏ほかの「津波履歴の精度向上に向けた津波堆積物の認定手法に関する研究−化学分析・有機質微化石分析からのアプローチ−」は,泥炭層中に挟まれる砂層が海起源のものか河川起源のものかを判定する手法として,渦鞭毛藻シストや底生有孔虫を検出することが有効であること,電気伝導度とpHも指標となり得ることを示しました。
なお,シスト(cyst)というのは,生物学の用語では「保護嚢子」(ほご・のうし)と訳されています。「動物の組織的な形態で,内部に液体や固体状のものを含む袋状の構造体の総称」(weblio辞書)です。
地質研究所は,急速に世代交代が進んでいるという印象を強く持ちました。また,研究のレベルも上がっていると思います。
北海道立総合研究機構の丹保憲仁理事長が出席していました。
第6回カムイの杜トレイルラン ― 2016/05/23 21:33
2016年5月22日に行われた「カムイの杜トレイルラン」の10kmに参加しました。
21日は,神居古潭の神居岩に登ってからカムイの杜杜公園へ行き,キャンプ泊しました。天気が良いので家族連れのテントが沢山ありました。
この夜は,月がこうこうと明るくテントの中も薄明かりです。さすがに,明け方の3時くらいになると寒く,目を覚ましてしまいました。
22日の朝は6時に起きて朝飯の支度をはじめ,7時には食事も後片付けも終わり準備が整いました。8時前に会場に行くと,42kmのスタートでした。
10kmは9時5分にスタート。日が高くなるにつれて暑くなり,途中で何回も水を飲みました。水は,1リットルを飲み尽くしました。今回はジェルの補給食を持って行ったのが効いたのか,後半になっても足がつることもなく,気持ちよく走り切ることが出来ました。
制限時間2時間のところ1時間30分で走れたのと,歩かずに全区間走れたのが収穫でした。
帰りは新十津川から浜益へ行く国道451号へ入り,道道当別浜益線の青山ダムに寄って帰ってきました。天気に恵まれ快適な2日間でした。
写真1 神居岩
神居古潭峡谷にかかる人道橋・神居大橋付近から対岸に見える岩で,緑色片岩,黒色片岩,チャートなどで出来ています。周辺には蛇紋岩が分布するとされています。
写真2 神居岩てっぺんの緑色片岩
写真3 青山ダムの放流
写真4 余水吐けを流れ下る水
この時期だけの放流のようです。流れ下る水の模様が見事です。
尻別岳 ― 2016/05/26 11:51
国道230号の脇にある尻別岳に登った。ルスツリゾートスキー場のある橇負山から尾根伝いに登山道がついている。
登山道入口へ札幌から行く場合,国道230号のルスツリゾートを過ぎ,ニセコ方面に向かう道道66号岩内洞爺線との交差点を右に曲がり,400mほど行った三叉路をまた右に曲がって道道257号留寿都喜茂別線を辿る。この道路から橇負山への道の入口が分かりにくい。
三叉路から3kmほど行った直線道路の途中に入口がある。入口にはタイヤを洗うための浅いプールがあり,種芋の栽培をしているので圃場には入らないようにとの注意看板がある。
砂利道をどんどん行くと突然のようにして尻別岳登山道入口の看板のある小さな広場に出る。さらに道は続いていて,橇負山頂上の駐車場へ行くことができる。橇負山からの眺めだけでも,来た甲斐があると思わせる。ただし,ルスツリゾートの音楽やジェットコースターの音がもろに聞こえてくる。
この日は,ロープウェイが動いていて頂上にかなり人が来ているようだった。
写真1 登山道入口
橇負山頂上の少し手前である。10台くらいは車を駐めることが出来る。
登山道入口の標高が660mで,尾根伝いにアップダウンを繰り返して723mのコルへ降りる。ここから標高1,030mの尾根までが,ほぼ一直線の急な登りである。登山案内書にはコルから頂上まで1時間10分と書かれている。この日は,コルから急登の終わる尾根まで45分,そこで握り飯を食べた。
写真2 シラネアオイ
登山道を入ってすぐ,シラネアオイの群落に出会った。シラネアオイは頂上にも咲いている。スミレも満開である。この時期は紫の花が多かった。
写真3 多分,ハクサンチドリ
あまり数は多くないが,濃い紫色と立ち姿が印象的である。
写真4 エゾフウロ
花びらに濃い紫の縞が入っているのが,おしゃれな感じである。
写真5 723mのコルへの下りから見た頂上
左の高まりは急登が終わる尾根の先端である。多分,右から二つ目のなだらかなピークが頂上である。
急登路の途中にはガレの始まりの部分が二箇所ほどありロープが付いているものの,かなり怖い感じがする。尾根の平均傾斜は30°弱であるが標高差が300mある。急登路が終わり尾根に出ると緩やかな上り下りを繰り返して15分ほどで頂上に着くことができた。
写真6 急登路途中の崩壊発生源
安山岩の露頭が崩れて登山道のすぐ側に迫っている。
写真7 ヤマザクラ
急登が終わり頂上へ向かう尾根道に咲いていた。ちょうど満開であった。さすがに標高1,000mを越えているので季節は少し遅れている。
頂上は思っていたより広い。何と言っても眺めが良い。
羊蹄山が間近である。その姿を見ながら残ったおにぎりを食べた。頂上の東側は平坦になっていて,まだ雪が残っていた。火口があったような地形である。
洞爺湖と有珠山,昭和新山も見える。天気が良ければ駒ヶ岳が見えるというが,この日はモヤで見えなかった。
南西には昆布岳の独特の山容が見える。北東には,多分,無意根山から余市岳の連なりが見え,南東にはホロホロ山が見える。
モヤが空一面にかかっていて遠くの山ははっきりしないが,眺めのすばらしさは抜群である。
写真8 頂上の標柱と羊蹄山
目の前に羊蹄山が見える。ここで,ゆっくりと昼飯を食べるのは最高である。この日はモヤがかかっていたが雲は無い。周りは一面笹原で,岩は露出していない。
写真9 頂上に転がっていた石
頂上に露頭はない。転がっている石はこんなもので,白濁した斜長石が特徴である。大きいのは径1cmある。左に角閃石の柱状結晶が見える。ここでは石英は目立たない。
写真10 洞爺湖と有珠山と昭和新山
洞爺湖と中島,その向こうに有珠山,左に昭和新山の尖った山体が,うっすらと見える。
写真11 南東から見た尻別岳
左裾が723mコルと急登尾根である。