国際年代層序表の最新版2013/02/04 22:07


 日本地質学会HPの「新着記事」に「地質系統・年代の日本紀記述ガイドライン 2013年1月改訂版」が掲載されています.地質に興味のある人はダウンロードしておくと良いと思います.
 
 この図で,GSSPと表記され黄色い釘のマークがある年代は,「国際境界模式層断面とポイント」が決まっている地質時代の境界です.つまり,この境界を示す代表的な層序が保存されている場所があるという印です.現在,最も古いのはエディアカランの下底境界で、最も新しい完新世の下底境界まで64のGSSPsが決定されています.

 下のサイトを見て下さい.
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工藤 隆著『古事記誕生 「日本像」の源流を探る』2013/02/05 11:36



 非常に面白い本です.かなり納得できる内容です.

 古事記については,いつ成立したのかということと,その内容はいつの時代のものなのかという問題がつきまとっていたようです.

 この問題を考えるポイントは,点としての古事記の成立と線としての古事記の成立を分けて考えることです.つまり,古事記が,西暦712(和銅5)年1月28日に太安万侶(おおのやすいまろ)が元明天皇(げんめいてんのう)に提出したものであることは良いのですが,古事記に書かれている内容は,いつの時代のことなのかという問題があります.これが「線としての古事記の成立」です.

 これらの詳しい内容は本書を読んで頂くとして,古事記の内容,特に「天の岩屋戸神話」の古さを長江流域の神話との比較などから,縄文時代から弥生時代にかけてのヤマト族の口誦によるものだろうしているのは,私には説得力がありました.

 そして,このことが,明治以後の近代化から太平洋戦争へと,現人神を頂いて突き進んでいった人々の情緒の根底にあるのではないかと著者は言います.もちろん,西洋の近代的な思想に触れて,この流れに抵抗した人々や違和感を持った人々がいたことも,事実としてつかんでおくことが必要だと私は思っています.

 西暦700年代を『古代の近代』と呼んでいるのも分かりやすい話です.このように捉えると,日本列島に人が住み着いて以降の長い歴史を,割合すっきりと理解できるように思います.


木村 学著「地質学の自然観」2013/02/07 14:10




 「ガクさんも,こういう本を書くようになったのか」と言うのが最初の印象です。内容は,なかなか面白い本です。

 地質学は地球の歴史を記述すると同時に,地球上で起こっている物理化学的過程を明らかにする学問であると言うのが基本的スタンスと思います。その基本にあるのが「斉一説」だというのが意外でした。また,地質的なあるいは天文学的な時間スケールで考えたとき,日常的な自然法則が通用するのかも地質学の大きな問題だとしています。

 プレートテクトニクスに関して印象的な記述は,「この「放散虫革命」,「地向斜対付加体」論争によって,日本の地質学は,詳細に露頭を観察し,詳細に年代を決める作業を経験しました。」(99p)という部分です。付加体地質学で日本の大きな利点となったとしています。

 現代的斉一主義という言葉が使われています。地球の歴史の中では,恐竜の絶滅のような激変事件が起きていて,必ずしも「現在は過去の鍵」とはならないことが明らかになっています。しかし,不断に進行する不可逆現象と激変事件とを複合的にとらえるのが現代的斉一主義ということです。斉一主義を実行するためには実験が不可欠ですが,それに加えて物理的観測との結合が欠かせないといいます。このような斉一主義の徹底を行わなかったことが,日本でのプレートテクトニクスの遅れの背景にあったとしています。

 日本は明治以来,西欧の学問を輸入してきましたが,当然,その背景までは輸入できないわけです。それが,地質学の領域拡大として地球物理学が発展したため地質学との融合が比較的容易であった西欧と日本との違いというわけです。

 地質学をどう進めるかについても多くのページを割いています。そこで強調されているのは,地表踏査を含む観察・観測の重要性だと思います。
 「しかし今,合理的カリキュラムに変更し,地質調査時間を復活させるべきときがきているように思えてなりません。」(141p)という言葉に凝縮されていると思いました。

 「付録 これから論文を書こうとする若い読者のために」が,最後に置かれています。この本の親しみやすい語り口とあわせ,木村氏の若い人への期待が感じられます。

 値段は2,500円(税別)で,ちょっと値が張りますが,一人でも多くの人に読んでほしい本です。

おおたき国際スキーマラソン2013/02/11 13:30


写真1 スタート地点付近から見た徳舜瞥山
 独特の三角の山頂を持つ。山裾の白く雪が見えるところがスキーマラソンのコースで、徳舜瞥砂礫層が分布しています。


 2月10日(日)に好天の中で行われました。何と言っても、風がほとんど無かったのが良かったです。空には、のんびりとした雲があるくらいで晴天でした。

 私は15kmに出ました。スタートは長流川左岸の大滝中学校のグランドです。初めの3km手前までは長流川に沿った林の中の緩い下りで、気持ちよく走れます。

 3km手前で川から離れ4kmまでがきつい登りで、標高差約80mを一気に登ります。この登りを過ぎるとほとんど木のない牧草地に出て、その中を多少の上り下りを繰り返しながら9km過ぎの最高点へ向かいます。

 この牧草地の中は遮るものがないので、雪が溶けていてワックスが合わないと少し苦労します。今回は、8km付近でスキーを脱いでワックスを塗りました。この辺りで、すでに1時間近くかかっていましたので、15kmコースを2周する30kmの選手に抜かれました。

 この日は天気が良かったので、徳舜瞥山の三角形の独特の山頂がよく見えます。風もなく、これでもう少しスキーが滑れば言うことなしです。多少、ばて気味ながら10km地点に到着しました。ここからは一気に標高差200mを下ります。本当に気持ちの良いコースです。
 何と言っても、スケーティングできるコースが2レーン整備されているのが最高です。この付近では、30kmの選手に次々と抜かれますが、コースの右側を滑っている分には迷惑をかけないですみます。スキーのうまくない私でも、転ばずにゴールにたどり着くことができました。

 この大会のコースは素晴らしいです。コースの広さと言い、キロ程の表示と言い、初心者でも、それなりの足があれば安心して滑ることができます。もっと多くの人に参加してほしい大会です。

 スタートは午前10時ですので、前日はホロホロ山荘に泊まり、ゆったりと過ごしました。走り終わった後は、第二名水亭の大浴場で疲れを取りました。

 北湯沢温泉付近は、長流川河床に流紋岩質溶岩が分布していて、その割れ目から温泉が湧出しています。
 一方、スキーマラソンが行われた大滝周辺は下流の北湯沢周辺と異なり、新第三紀長流川累層の流紋岩質砂岩層や更新世の徳舜瞥粘土層が分布しています。スキーマラソンの3km過ぎの坂は、後期更新世の徳舜瞥砂礫層の台地へと登っていく斜面にあたります。


写真2 2月9日の朝、札幌は快晴


写真3 国道230号、中山峠は吹雪(2月9日午後5時頃)