「なぜ地球だけに陸と海があるのか 地球進化の謎に迫る」2013/01/16 12:05




 太陽系の中で地球だけに液体の水があります。原始海洋で生命が誕生したのも熱水が噴き出す場所であったとされています。地球の表面を覆うプレートも水を含んでいるために軟らかくなり移動したり沈み込んだりといった運動を起こします。その水の大部分(97.4%)は海に集まっています。海が形成されたのは地形的に高い陸地が存在したからです。そして、「海の中で大陸が生まれる」という仮説を説明したのがこの本です(本書の「まえがき」を要約しました)。

 さて、巽氏(神戸大学教授)は、アメリカ地球物理連合の2012年度ボーエン賞を受賞しました。巽氏は2012年12月4日に「安山岩問題:なぜこの惑星は地球であるのか」と題して記念講演を行いました。

 この本は、これまでの巽氏の研究を分かりやすく述べたものです。謎を知りたい方は、是非この本を読んで下さい。

 なお、ボーウェンは、マグマから鉱物が晶出する順序(ボーウェンの反応系列)を明らかにした岩石学者です。

<参考ウェブサイト>
 日本地質学会HP>geo-Flash>No.207

大飯原子力発電所の「地すべり」・活断層2013/01/28 20:47

 原子力発電所に関わる活断層調査が進められています。専門家会合の記録が公開されているので、何が問題か分かりやすくなっていますが、それでも長年地質調査に関わってきたものとして、どうしてこんな考えがまかり通るのかと疑問を感じることが多いです。

 敦賀原子力発電所敷地内の断層は、活断層の可能性を否定できないと言うことで決着がつきそうです。
 東通原子力発電所の「膨潤」による地層の変形は、原子力規制委員会では認められそうにありません。このような機構での地層の変形を専門家会合のメンバーが認めたら、恐らく研究者として生きていくことはできなくなるでしょう。

 「有識者会合」で揉めているのは大飯原子力発電所のF-6 断層の評価です。ただし、この中でも明らかになったことがあります。

1)F-6 断層の位置が変わった
 F-6断層は、これまで西に60°くらいで傾斜しているとされていましたが、ほぼ鉛直であると修正されました。

2)北側の海岸に見られる平坦面の形成年代
 この平坦面は、上に堆積している火山灰の時代を根拠に、海洋同位体ステージ(MIS)の「MIS7」(約22万年前)とされていましたが、そうではなくて「MIS 5」(約13万年前)であるとの指摘があり、委員から異論は出ませんでした。

 この二つの点だけでも非常に大きな問題で、立地審査が適正であったのか、事業者が科学的判断にもとづいて書類を作成したのかが問われると思います。
 地層のズレが生じた時代が「MIS7」であれば「原発で言う活断層」ではなくなるのですから。
 断層の位置がずれるというのも困ったもので、原子炉建屋の下にあれば完全に不適格となるという原発の死命を制する問題なのに、追加調査で変わってしまうようでは何を信用して良いか分からなくなります。

 さらに、地すべりか断層かで揉めるようなトレンチ壁面の状況ではないと思います。

 渡辺氏が指摘しているように、台場浜トレンチの東と西で出ている地層のズレは、明らかに動いた時代が違います。これは、写真を見れば一目瞭然です。このことについて、地すべり説の岡田氏からも重松氏からも反論がありませんでした。
 重松氏に至っては、渡辺氏が「事業者が考えているような蛇紋岩体の底部をスベリとするような地すべりがあるとしたら、滑る方向が違うはず」という発言に対して、「何の根拠もなくそういうことを言うべきではない」とまで言っています。
 これは渡辺氏の言うとおりで、地すべりというのは重力によって下方に地盤がまとまって移動する現象ですから、一番低い方に向かって動くはずです。まあ、地層の傾斜に規制されて斜面に対して斜めに動く場合もありますが、今回の場合はそれは当てはまらないでしょう。

 トレンチで見えている地層のズレのうち、東のズレは基盤岩である蛇紋岩とそのすぐ上位の地層(E層)を変位させているのに対し、西のズレはE層を変位させていません。
 ですから、この二つのズレが地すべりによるものであると言う判断は、明らかに間違いです。
 この東のズレについて、岡田氏は「私は、こんな活断層は見たことがない」と発言しています。岡田氏が活断層と認めるのは、「1mmでも良いのでスベリを示す粘土がなければならない」と言うことのようです。繰り返し発言していました。

 悲劇的なのは、専門家の中に地すべりを扱った人がいないことでしょう。恐らく地すべりと、まともに付き合ってきた技術者であれば、まず背後の斜面に地すべり地形があるかどうか空中写真、地形判読を行い、さらに踏査をします。事業者は地すべりの形を描いていますが、この地すべりブロックは何を根拠に描かれたのかが分かりません。粘土鉱物の分析や電子顕微鏡写真による破砕帯の判定などと言った資料を提示しても、地すべりとしての地形判読ができないのであれば何の意味もありません。移動土塊が消えてしまった地すべりというのは、動く土塊がないのですから地すべりとは言わないと思います。

 千木良氏が地すべりだと言っているという新聞報道を読んで、空中写真を見てみました。
 地すべりらしき地形があります。しかし、スベリの方向は事業者の言っている方向ではないようです。動画で見ると、レーザー測量の図面で、かなり明瞭な地すべり地形が認められるように思います。

 専門家会合では、岡田氏が千木良氏のコメントを読み上げました。事業者と同じ見解のようです。この時、岡田氏は、千木良氏が応用地質学会の会長であると紹介しています。そして、「どういういきさつで千木良氏がトレンチを見たのか」と言う島崎氏の質問に、岡田氏は「たまたまだと聞いている」とだけ応えています。
 千木良氏は現在、京大防災研究所の教授で、斜面災害の専門家↓です。元は電力中央研究所の研究員でした。
<http://www.slope.dpri.kyoto-u.ac.jp>

 大飯原発の専門家会合での議論が、何となくイヅイ(居辛い)のは、専門家会合として事業者の不備な点を指摘し原発の安全性を何としても確保するのだという使命感に欠けているからのように思います。特に、岡田氏、重松氏の議論は方向が間違っているように思います。放射能被害で人の住めなくなった福島第一原発周辺の状況を見に行ったら良いと思います。それだけの責任を負った判断を迫られているのです。

 最後に、ネットで調べていたら「活断層を理由に原発を留めるのは非常識だ」という大前研一氏の意見に遭遇しました。カリフォルニアのサンアンドレアス断層の近くに原発があるが、問題にもなっていないそうです。
 でも、これは全くのウソ。原発建設計画が撤回された事例があり、活断層は大きな問題となっています。
 例えば、<http://www.gns.ne.jp/eng/g-ken/igiari/obj_300.htm> や
<http://sanonofresafety.org>
 大前氏は、活断層について全く何も知らないと言うことを、このコメントで自ら暴露しているようなものです。大前氏の意見は、影響が大きいだけに注意を喚起しておきます。