電磁波による地震予測2012/03/04 20:35

 電気通信大学名誉教授の早川正士氏のグループが行っている短期地震予測の方法です。
 早川正士著「地震は予知できる!」(KKベストセラーズ,2011年12月刊)にもとづいて紹介します。

 

 地震が発生する5日から12日前に電離層に異常が発生します。これを超長波/長波(VFL/LF波)を観測して知ることで,マグニチュード5以上の地震の発生時期と場所と規模を予測しています。超長波は周波数が3〜30キロヘルツ(波長10〜100キロメートル)の電波,長波は周波数が30〜300キロヘルツ(波長1〜10キロメートル)の電波です。

 これらの波長を持つ電波は,電離層の最下層(D層)で反射されやすく,地震発生前に電離層が擾乱されて地表側に押し出してくるのを電波の到達時間の変動によって捉えます。つまり,電離層の擾乱が起きると電波の到達時間が,それまでより短くなるのを利用します。

 VFL/FL波の発信局は,国内では宮崎えびのと福島にあり,そのほかに,オーストラリア西部,シアトル,ハワイにあるものを利用しています。受信局は,北海道の母子里と中標津,東京の調布,愛知の春日井,岡山の津山,高知の6地点です(ウェブサイトで示されているのと異なっています)。

 電離層の擾乱は地震によるほかに,磁気嵐や雷でも発生します。これらとの識別を行っています。

地震予測アーカイブは↓。「地震解析ラボ」>「予測情報アーカイブ」
<http://earthquakenet.com/prediction201112.html>

過去の地震情報は↓。「tenki.jp」>「防災情報」>「地震情報」>「過去の地震情報」
<http://tenki.jp/earthquake/entries>

 電磁波による地震予測の歴史は古く,1988年12月7日にアルメニアで発生したマグニチュード6.8のスピタック地震の前兆として,地殻から極極超長波(ULF波:波長数万キロメートル)の放射が確認されたのが最初です。これは,地殻から放射される電波を直接観測して地震予測を行うものです。ですから,すでに四半世紀近い歴史があります。

 実用に供されている地震予知方法として有名なのは,ギリシャで開発されたVAN法です。この方法を発明した3人の科学者の頭文字をとってVAN法と命名されています。地震の前に微少破壊が発生して電磁波が発生します。この電磁波が,地中を流れている地電流に変化を与えるので,これを観測すれば地震を予知できると考え,観測方法を確立したのがVAN法です。
 そして,1993年3月のギリシャ西南部で発生したマグニチュード5.7の地震発生を劇的な形で予知しました。

 早川氏たちの主張は,地震予知は実用段階に入っていると言うことです。興味のある方は,予測情報アーカイブと過去の地震情報を比べてみると良いと思います。

 私自身は,地震の前に電磁波が放射されると言うことは,現象としてはあって当然のことだと思います。地震前の電磁波放射により電離層が乱されるメカニズムが解明されていないというのが弱点でしょう。
 しかし,南海トラフの3連動地震や千島海溝の巨大地震の短期予測のために,国としてこの方法の観測態勢を整えることに今すぐ着手する必要があると思います。


コメント

_ よしだ ― 2012/04/10 16:08

こんにちは。

>興味のある方は,予測情報アーカイブと過去の地震情報を比べて
みると良いと思います

比べてみると、的中率はたったの3%だそうです。
http://blog.goo.ne.jp/geophysics_lab/

また、予測情報アーカイブには、東日本大震災の余震域以外のM6以上の地震を予測していた実績が、皆無だそうです。

彼らは、デタラメでも当たるような、余震域における頻発地震を言い当てて、得意になっているだけ、と切り捨てられています。

_ ブログ主 ― 2012/04/11 11:23

 確かにおっしゃるように,マグニチュード5以上の地震も数多く起きていて,起きた地震のどれが,どの予測に該当するのか分からないなと思いました。
 そして,なぜ電離層の異常が発生するのかの理屈が解明されていないという点では,主流の地震予知と似た状況かなと思います。

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